第32話
蘭と桂は年子ながら、外見も性格も似ても似つかない。見た目でいえば、蘭は実年齢よりお姉さんに見え、逆に桂は身長も体重も平均を下回り、誰からも3歳くらいは若く(?)見られた。
ジャックはそんな桂に、
「もっと背が伸びないかな〜。あんまり背が低いと学校でいじめられるぞ。」
と保育園時代から繰り返し言っていたので、私はイライラした。外見で好かれる嫌われる、との考え方そのものを受け入れ難かった。もちろん娘たちに〝そういうものなんだ〜〟と間違って学んでほしくなかった。
「桂がどんな体型でも、ちっちゃくても、ママは桂が大好き。ちっちゃな桂はとっても可愛いよ!」
としょっちゅう言った。本当にそうだった。
また、涙もろい蘭とは対照的に、桂はめったに泣かなかった。飽きっぽい蘭に対して、桂は我慢強く、集中すれば同じことを長く続ける子だった。
両親の離婚に対しても、姉妹のその後の反応は違った。2人とも、パパとママが復縁すればいいのに、と願っていたけど。
蘭は、私と日本に帰国後、どんどん変わった。反抗期のスタートが早かったのかもしれないが、トゲトゲした言葉を吐く、態度をとることが日増しに顕著になった。
蘭はなんでそんなこと言うようになったの?
どうして、以前みたいな蘭じゃないの?
と思わず口に出すと、
「あんたたちが離婚したから! 私に変わるなって言う方がおかしいよ。」
などと吠えた。
私がジャックとの張り詰めた生活に疲弊し、精神を病んだことを彼女は知っている。ジャックが私にいかにキツい言葉を放ったかも知っている。
しかし、それが私を思い遣ったり、母親はとことん辛抱してこの結論を出した、という理解には至らなかった。頭ではわかっていても、感情的に上手に処理ができないのか、しっかり者に一見見えても、私が望むほどまだ成長していないと考えるしかない。
一方、妹の桂の〝恨み節〟を聞いた記憶はない。こちらが寂しくない? などと尋ねて初めて、寂しい、とこぼした。
「家にいても、家族、っていう感じがしない。」
と言った悲しい愚痴に私は胸をえぐられ、申し訳なさを改めて痛感した。あれは忘れられない。
それにしても、蘭の「私がこんなになったのは、親の離婚のせい」発言には頭を抱えた。
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