第六十三話 魔導の塔と団体戦

「そういえば、僕は防御魔法覚えてないな」

肝心なことに今思い至った。

防御魔法というのはあるのだろうか。

そういえば修行でも攻撃魔法の使い方しか習ってなかった。


そう思っていると

一体フリーにしていた、ホブゴブリンが僕を目掛けて攻撃してきた。

ホブゴブリン2体に意識を割いていたので、そこをつかれて、もう一体の攻撃を招いた。


「これはマズイ」

そう僕が口にした時に、大きく影が動いた。

ラクスだ、ラクスが、ホブゴブリンの後ろに回りこんで、切り込んでいた。


「やぁ!」

高い通った声と、空気を斬る剣。

ホブゴブリンが僕を切り込むより早く、ラクスはホブゴブリンを後ろから斬りつけた。

「おおお」

僕は声にだした。


「グオォー」

ホブゴブリンが雄叫びを上げて消失した。

斬りつけたあと、ラクスは剣をしまった。


「攻撃しているときは、盾を持っていてもスキだらけね」

なるほど、たまたま囮となっていたが、相手にターゲットを集中させると、そういう効果があるのだった。

盾を持っていても、背中までガードすることはできない。


相手を一人に集中させるというのは、そういう効果がしっかりあるのだった。

団体戦の戦い方を、また学んでいた。

シューターがやるべき役割と、アタッカーがやるべき役割はかなり違う。

この塔に来てから、かなり戦略的な戦いが出来るようになってきた。


「おォィ、こっちも頼むぜェ」

一人で長い間、ホブゴブリンと剣を交えていたガルクが、言った。


そう言うかいなか、後ろに回りこんで、ラクスがホブゴブリンを斬りつけた。

「グオォオォォ」

ホブゴブリンのうめきが聞こえて、消失した。


「よし!」

ラクスはそう言って再び剣をしまった。


「ここの階、全部ラクスが倒したね。」

「そういえば、そうね。夢中になっていた、忘れていたわ」

「ははは、ラクスらしい」


そういうやりとりをして話を続ける。

「やっと団体戦の戦い方がわかってきたわ、一人で戦うのは大違いね、いままで一緒に戦ってきたと言っても、一対一で戦うことが多かったけど、今回は敵が強いからだいぶ勝手が違うわね。」

「そうなんだよね、パワー勝負だと負ける。自分より得意な何かがある相手と複数戦わなきゃいけないとなると、かなり複合的な戦い方をしないといけない、組み合わせた結果こちらの方がプラスになるマッチアップをしないと負けてしまう」


「そうね、ホブゴブリンと力勝負したら勝てないわ」

「オレでギリギリだなァ」

「そうなんだよね、同じアタッカーでも、ラクスとガルクは性質が違うからかなり違う戦い方が必要になるね」


僕らは、戦いが終わった後、休息とブレストをしていた。

なんとなく、みんな気がついていたからだ、次はホブゴブリンが4体出てくるであろうことを。


そして、次の階についた

「ああ、ほら、やっぱり。」

先ほど3体で苦戦したホブゴブリンが4体いた。

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