ワードローブ! ミルク焼きで乾杯!

★サイドストーリー

友達となった美咲とさくら。正反対の性格の二人は、お互いのことをどう思っているのでしょうか? 本編では触れなかったアンバサダーたちのもうひとつの物語です。



      ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



★お餅屋さんの店先



 ここのミルク焼き、おいしいんだよ。あんこがたっぷりで皮ももちもちでさぁ。でも、さくら、知らなかったの意外だなぁ


 「テレビとか、話とかは聞いたこと、あるけど、買った事なかった、から」


 あ、ひょっとして、お母さんから買い食いダメって言われてる?


 「ううん、そんなこと、ない、よ?」


 そうなんだー。


 さくらってお嬢様だから、そういうの家で厳しいと思ってた。


 「うちは、普通の家、だよ? わたし、そんなにお嬢様に、見える?」


 正直に言うと……見えちゃう。


 「自分だと、そんなこと、あんまり思わないから……」




 明日の事もあるから、さくらを誘って一緒に帰ることにしたんだけど、ちょうどお腹もすいてたし家族も好きだから学校近くのこのお店に入ってミルク焼きを買うことにしたんだ。


 「あー、井川さんじゃん! 井川さんも買い食いするんだー」

 「う、うん。こんにちわ」

 「ん? なんだ、みさきんぐもいっしょじゃん!」


 なんか騒がしいとおもったらゆっぴんじゃん!

 あ! 今度カラオケ行くじゃん? それでさ……


 ゆっぴんたちと今度カラオケ行くことになってて、その話をしたんだけど……

 あれ? なんか、さくらが戸惑ってる感じが……


 「あ! 井川さんもいっしょにいかない!?」

 「え!? あ、えと……」


 さくらはさぁ、その日、ちょっと用事があるみたいなんだよね。だからまた今度だね。ね? さくら?


 「うん。ごめんね、ちょっと家の、用事があって……」

 「そうなんだ…… あ! おじさん! ミルク焼き! ミルクたっぷりで!」

 「ミルクは入ってないよ。色が白いだけ」

 「え!? そうなの!?」


 え? それは私もしらなかった!


 ……むー

 

 さくら、なんか、表情硬いなぁ……


 う、それでも、結構かわいい。


 お胸も私より……


 いやいや、それは今は関係ないし!






★秋田駅コンコース待合室


 うーん、無理やり付き合わせちゃったかな……


 さくら、ごめんね? なんか無理させちゃった? 


 「ふぇ!? ぜ、全然無理なんか、してない、よ?」


 なんか、さっきゆっぴんが話しかけた時さ、ちょっとなんか困ってるようにみえたからさ。私の友達ってさ、私がそうだからだと思うけど、ちょいうるさい子多くて。さくら、そういうの苦手かなって思って……


 「……、あのね、そうじゃ、ないんだ」


 ??


 「私、学校で、仲のいい子とか、まだいなくて。友達と、学校から一緒に、帰るの、はじめてで……」


 そうなんだ……


 「だから、いろいろ、新鮮な感じで。無理、してたわけじゃ、ないよ?」 


 そっか。あのね、さくら、私さ……




 ――ガゴッ 


 『えー、ご案内いたします。奥羽線下り八郎潟行きは、遅れておりますこまち号の接続をまってからの発車となります。お急ぎのところご迷惑おかけいたします……』






 あー、ちょっと遅れそうだね。大丈夫?


 「私は、別に家に、帰るだけだから……あの、美咲ちゃん、さっきの……」


 え? ……なんだっけ、私何言おうとしてた?


 「ええ? わかんない、よ?」  


 あはは、ごめん、私、頭弱くてさ、言いかけてたこと忘れたりとかよくあるんだ。なんかさ、一つの事に気が向くと、そっちに引っ張られちゃう感じで……


 およ? 


 なんで笑ってるの?


 「ふふふ……ごめんね、美咲ちゃん。なんか、かわいいって、思ったから」


 おお!? かわいい!


 やー、あんまりかわいいとか言われないから、ちょっとうれしいかも。


 「美咲ちゃんは、かわいい、よ? 私、美咲ちゃんみたいに、なりたいって、おもってるよ?」


 私みたいに? えー、さくらの方が女子力も高いし、女の子っぽくていいと思うのになー


 「……私、引っ込み思案で、人見知り、すごいし。美咲ちゃん、お友達もたくさんいるし、お話とか、いっぱいできる、し。うらやましい、よ?」


 

 そっかー。さくらから見ると、私、そう見えるんだ。

 意外だったなぁ……


 でもさ、私はさ、どっちかっていうとさくらみたいになりたいって思うよ」


 「私、みたいに……?」


 

 うん。


 実をいうとさ、私、友達は多いよ。それは自慢だし、みんなのこと大好きだし!


 ……でもさ、本当に仲のいい子っているのかなって、思うことあるんだ。


 ズッ友? 親友? なんかそんな感じの子。 


 中学の時も、男子にさ「女子とは思えない親しみやすさ」とか言われて、女の子扱いされたこともないし。


 私の性格、どっか女の子の真ん中からずれてる気がする。


 だから、私、さくらみたいに、頭良くて、ちゃんと女の子してる子みたいになりたいって、時々思うんだよ。


 「美咲ちゃん、今のままでも、すごく、魅力的だと、思うけど……」


 ん? 今なんて?


 「え!? いやあああ、あの、その! 別に深い意味は!」


 あはは、普通にうれしいよ、そういうの。

 なんか性格、正反対っぽいのに友達になるなんて面白いね。


 「……私、自分が暗い感じで、付き合いづらい面倒な人だと思っていたから、美咲ちゃんに声をかけられたとき、ちょっと、びっくりしたけど、うれしかった」


 わたしはねぇ、さくらが隣のクラスの優等生で、お嬢様って聞いてたからとっつきにくいと思っていたんだ。


 「……優等生とかは違うけど、とっつきにくいのは、正解、かも」


 そんなことなかったよ、さくら。

 だって、一緒にいて、ぜんぜん嫌じゃないもん。

 それに、さくらも、意外といろんな表情するもんね。


 「そう、かな?」

 

 そうだよ! 


 「……お話ししてみないと、わからないものだね」


 うん! さくらにあの時話しかけてよかったよ。


 ―― ぐぅ~~~……


 う、おなかの音が…


 「き、きこえてない、よ!」


 それ、絶対聞こえてるじゃん……


 よーし、それなら……


 ―― がさがさ


 よし、これを……おお、あんこたっぷり


 はい、さくら、半分こ!


 「ええ? でも、それ、美咲ちゃんちの……」


 いいのいいの。余分に買ってあるし。

 それに、友達なんだから、こういうの遠慮はいらないんだよ?


 「……うん。ありがとう、いただく、ね?」


 あはは、それじゃ、深い意味はないけど、かんぱーい


 「か、かんぱーい」







 ふーん、さくらって食べるとき、一口づつ小っちゃく食べるんだね。

 私は、食べきっちゃったよ……

 こういうところに女子力の差がでるのかな?


 ……

 

 あ、そういえば、もう明日なんだね。入社式。


 「うん。明日だね……9人、いるから、他の子、7人、いるんだね」


 どんな子たちなのかなぁ。


 「美咲ちゃんは、どんな子、だと、うれしい?」


 私はねぇ、面白い子たちだといいなーって


 さくらは?


 「私は、優しい子だと、うれしい、かな?」

 

 なんか、さくらっぽい感じだね。


 「美咲ちゃんも、なんだか、美咲ちゃんっぽい答えだよ?」


 あはは そっかー。


 やっぱ、類は類友だっけ? そんな感じ?


 「類は類を呼ぶ、だよ」


 そうそう、それ、それだよ!


 「これから、どんなこと、起きるんだろう?」


 さくら、なんだか、うれしそうだね?


 「そ、かな? ……うん、世界が広がる、感じ。嫌じゃない、かな?」


 世界が広がる、か。

 

 うん! きっと楽しいことがいっぱいあるよ!


 テレビに出たり、ステージにでたり……


 有名人になってたりして! 



 「有名人に? ……1年後の私たち、どうなって、いるかな?」


 きっと、その時もこうやって一緒に学校から帰ってるよ!


 それは断言できる!


 「ミルク焼きを買って?」

 

 うん! よーし、来年もまたここでミルク焼きで乾杯しようよ!


 あはは、へんかなー?


 来年の事いうと、なんかが笑うっていうけど……


 さくらも、なんか楽しそうに笑ってる!


 





 さくらと、新しい仲間と、きっと来年の今頃みんなでキラキラ輝いてるんだ!


 だから、さくら、一緒にがんばっていこうね!



 ――― だって私たち、きっと親友になるんだから!





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