第255話

 学校が終わると、私は五ヶ月まえから始めた新しいアルバイト先にむかった。


 学校からの指示で四キロ以上離れた場所で働くことが、私のアルバイト許可の絶対条件だ。


 そのバイト先は、例の繁華街の通りのはずれにある場所で、求人情報誌には掲載されていなかった個人経営の飲食店だ。


 アルバイトは私ひとりだけで、その家のご夫婦は私のことをとてもかわいがってくれる。


 そして時給もけっこういい。


 バイトが終わると、私はこの店のオーナーであるご夫婦に来週に迫ったクリスマスイヴに休みがもらえないかたずねてみた。


 とうぜんのように、色よい返事をくれた。


「初乃ちゃん。まさか、デート?」


 茶化されたが、ただのクラスのクリスマス会ですよとしっかり否定しておいた。私にはクリスマスにデートをするような相手はもう日本にいない。


「おつかれさまです」


 お店をでると、しんとしずかな繁華街の路地裏にでた。


 ひとりはさびしい。吐く息が白い。

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