第243話

 だからそのあとのことは、全部きいただけの話だ。私はなにも見ていない。


 次に私が目を覚ましたのは、それから三日後のことだった。目をあけると病院のベッドに横たえられていた。


 私は記憶があいまいだった。なにがどうして自分がここにいるのか、すぐに理解できなった。


 ぼーっとしていると病室の扉がひらいた。


 私はベッドに寝たままで、視線だけをそちらにむけた。


 病衣びょうい姿の矢野が包帯ぐるぐる巻きの顔で、松葉杖をついて部屋にはいってきた。


 まわりには数名のヤンキー。おなじクラスの矢野のとりまき連中だ。


「宮沢」


 矢野は私の目がひらかれていることに気づいたようだ。


 仲間に先生を呼んでくるよう指示をだし、みずからは私のベッドに近づいた。ほか数名のヤンキーも矢野の左右をささえながら部屋にはいってくる。


 ベッドのわきのパイプイスをとりまきのひとりが用意した。そこに矢野は腰をおろす。あいかわらずの猿の山の王さまだ。


「目、覚ましたんだな」


 そういって私を見た。

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