第227話
「べつに、おまえをたすけにきたわけじゃない」
心を読んだのだろうか、矢野はいう。
「丹波を病院送りにしちまったおれの責任でもあるからな。それにこの病院のこの病棟にあいつを入院させたのも、このおれだ」
いいわけが照れくさそうだ。
「そんなやつがこの場所で殺されたりなんかしたら、寝覚めが悪い」
なるほど。
矢野のいいぶんはそういうことか。
「ふっ」
うちのクラスの大将は楽しそうに鼻で笑う。
「矢野雅洋をなめるな。これがおれのやりかただ」
威張り散らしたような口調でいう。
だが、私にはそれが照れ隠しのようにも感じられた。だって矢野は救急車を呼ぶ段になったとき、一番手厚い看護をしてくれるだろうという理由で、この病院をみずから提案したのだ。
さすが私立学校のおぼっちゃんの不良である。仲間うちで威張ったりとくさっているが、生ぬるくて根はやさしい。
「宮沢」
矢野はおおきな背中をさらにおおきく見せたみたいだ。うしろにいる私を隠すように立った。
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