第196話

「そっか」


 理子はいう。


「ちょっとまえに涼ちゃんに連絡とったけど、やっぱりまだ見つけられていないみたい」


 わかった、ありがとうといって電話を切った。今回は十円ぶんですんだ。


 空をあおぐ。


 太陽はてっぺんをこえて角度をじょじょに浅くしていた。


 持ち時間はあとどれくらいだろうか。


 今日この街にいる少年たちの姿が完全に掃けるまで見つからなかった場合、丹波は外出せず無事だと考えてもいいのだろう。


 そうなったならば、御の字だ。


 あとで理子や天野くんにむだ足になってしまったことを頭をさげてあやまればいい。


 あるいは私や理子や天野くんが街じゅうの不良たちより先に見つけて、このことをつたえれば、たとえ丹波が外出をしたとしても私たちの勝ちになる。いくらでも対策のとりようがある。


 こう考えると、それは希望のある確率なのではないだろうか。


 そんなふうに私は思い始めていた。


 あいもかわらず、ずいぶん甘い算段だ。

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