第153話
「丹波が私を守るためっていうのなら、べつに学校で仲よくしなくていい。けど、友達でいてよ。遠くからでもいい。私を見ていてほしい。それだけでひとりぼっちじゃないて思えるから」
「ふっ」
丹波は笑った。根負けしたような表情だ。
「わかったよ」
そういって階段をおりたぶんだけ、ふたたびのぼった。私のすぐ目のまえまで近づく。そして、私を正面から抱きしめた。
びっくりした。
脈が速くなるのを感じる。
悲鳴をあげそうになったが、言葉がのどの奥で詰まった。
べつに熱っぽい意味はないハグのような抱擁だったが、慣れない私はただただどぎまぎするだけだ。
「まあ……」
私の心臓が限界をむかえるころ、丹波は私を解放した。
「おれが、もといじめられっ子のあんたに守られるなんていうことはないと思うけど」
その「もと」という言葉が妙に嬉しかった。もう私はいじめられっ子じゃないのだ。
「自分だって、もといじめられっ子なんでしょ」
「ちげーねえ」
そういって丹波は笑う。
私はさらにへらず口のせりふを足した。
「それにあんたじゃない。初乃」
丹波は、くくっと笑う。
「そうだな。初乃」
「うん」
私も笑う。
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