第54話

 私たちはそのまま横にならんで歩いた。


 教室を最後にでたせいか、道路にうちの学校の生徒はまばらだった。おおきな列や集団はなく、二、三人のグループがぱらりぱらりとあいだをあけて歩いているという感じ。


 とうぜん矢野たち不良グループもどこにもいない。


 派手目の生徒がちらと見えたがグループではなく個人のようだ。私と転入生はそんな列にならない列の一員になりながら駅にむかった。


 私は先ほどの転入生の質問にこたえた。


 矢野は理事長の孫で、この学校の権力者。だからこの学校に通っている以上は、誰も矢野に逆らうことができないということ。


 そして私は高校から入学してきたため、いつまでたっても外部からきたものというあつかいだということ。


 もっといえば私が入学したときにはすでにもうクラスではグループができていて、外部の人間がはいるすきまなどなかったこと。


 そのために、こういった仕打ちを受けていること。


 そんなことを話した。


 もちろん、こういった説明をするうえで私の家庭の事情も話さずにはいられなかった。


 父が失業していること。


 母がこの学校で清掃員のパートとして理事長に雇ってもらっていること。


 さらにいえば、この母のパート自体、私が学校側にお願いしたという事情もふくまれているということもつつみ隠さず説明した。

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