第52話
けっきょくことわることができなかった。
転入生の男の子といっしょに帰ることになる。とりあえず駅までいっしょに歩くことにした。
今日も私はこれからアルバイトがあるので、この選択肢もしかたのないむきといえばそれまでだった。あのままだらだらと男の子とげた箱のところで立ち話をしているわけにもいかない。そういう事情もあった。
もちろんそういった理由は、学校をでる時点で転入生にもつたえてある。
もし万が一、私を誘拐しようものならばアルバイト先の誰かが出勤しない私の異変に気がつくはずだから、くれぐれも悪いことは考えないように。そんな牽制の意味もこめてである。
もっとも私がそんなことをいったからといっても金髪のヤンキー転入生は私の注意になどまるで興味をしめしていなかったが。
「それで、あ……」
あんたといおうとして転入生はいいなおした。私が横からにらんだからだ。
「……初乃は、なんでいじめられているの」
それにしてもコーカソイドはなれなれしい。いきなりしたの名前を呼ばれて、耳がかあっと熱くなる。おそらく顔もゆでだこみたいな色になっているはずだ。
「そんなの」
知りません。そういおうとすると男の子が私の顔を横からひょいとのぞいてきた。
「ねえ、なんで?」
顔が近い。
超至近距離で目と目があう。吸いこまれるほど綺麗な顔だ。
私はあわてて顔をそらした。
早足で歩きながら吐き捨てる。
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