第39話

「すんませんでしたっ」


 かんべんしてください。


 そういって大男はこちらをむいて立っている転入生に頭をさげた。


「こいつらは、おれたちがきっちりシメておきますんでっ」


 それにならってうしろの暴走族集団もおなじように頭をさげる。きょとんとしていた最初のヤンキーはリーダーに無理やり頭をさげさせられた。


 なんだか異様な光景だ。


 転入生はなにも言葉を発しない。ただあごの先を横に振っただけだ。


 さっさといけ。


 そういったジェスチャーに見えた。


「アリガトーゴザイマシタ」


 はっきりと繁華街に響く大声でリーダー格の男が叫んだ。そして倒れているヤンキーたちを拾いあげるため集団は路地にはいっていった。


 金髪の転入生ははなにもせずにこちらをむいて立っている。


 私は転入生のそんなようすを見つめたままでただただ動きをとめていた。


 不意に目があった気がした。


 やばい。


 私はとっさに目をふせた。


 のぞいたことがばれたかもしれない。


 あわてて足をまえにだし、駅にむかって歩き始めた。


 私が商店街を抜ける直前、私の背中でバイクのエンジン音がいっせいに鳴った。


 一瞬間大音量で爆発して、すぐにそれは遠くに離れていった。


 静寂が耳に一瞬残り、そのあとはいつもの繁華街の喧騒が戻ってきた。


 あの転入生、かっこいいけど、なんだかあぶない人みたいだ。


 そんなやつがおなじクラスにはいってきてしまった。


 もし万が一、矢野たちとべたべたに仲よくなってしまったらどうしよう。明日から私へのいじめはさらにエスカレートしてしまうのではないだろうか。


 一連のできごとや今後の自分の暗い未来にびくびくしながら駅にむかった。

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