第22話
そのまま無限の数秒間が経過した。
静寂。
静寂。
ただ静寂。
無音のなか、ごうごうと鳴いているエアコンだけがやけにうるさい。そのかん誰ひとり動くものはいなかった。
私はふたりをただただ見つめた。
動きは次の瞬間起こった。
転入生が拳をぎゅっとにぎった。
肩の位置が一段高くなったので、腕に力をいれたというのがわかる。
とてつもない。
殺気がただよい、教室がぴりぴりした。転入生の腕がスローモーションであがる。
空気が刺さった。
びりびりしている。
むやみやたらに肌が痛い。
が、それも一瞬だった。
私が耐え切れず目をつぶってしまうまえに教室にべた塗りされていた緊張の色は消えた。
「よろしく」
そういって転入生は、胸の位置まであげた拳を軽くまえに突きだした。殴る気のないパンチのポーズだ。
「ああ」
クラスの不良グループのリーダーも、おなじように拳をにぎる。
「矢野雅洋だ」
名のりながらそれをまえに突きだした。
「ふっ」
転入生の鼻から息がもれた。ふたりの中央でふたつの拳がこつんとぶつかる。男どうしの時代がかったあいさつだ。
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