実験室8

マ-ニャは嗚咽をもらし泣きじゃくっていた

するとその女は本当に困惑した表情で言った

「マ-ニャ…何を泣いているんだい?」

「ごめんね…その言葉でいいのかい?」

「ごめんね…これでいいかい?」

「言ったよ?」

「これで…これで私の元へ来てくれるのかい?」

俺は言いようのない感情にさいなまれていた

この女に何を言っても無駄だった

人にとって最も大事な部分が欠落しているのだ

しかし母親としての歪んだ愛情は本物だろう

俺はあの女にミネアとマ-ニャの事を

心配しているのは本心ではないと言ったが

それは間違いだったのかもしれない

そして、みんな何とも言えない悲壮感を感じてるうちに、

ミネアは嗚咽をもらし言葉を発することのできないマ-ニャを

代弁するようにその女の前に出た

しかし、うまく口から言葉が出ないようだった

ミネアは困惑するその女を哀れみの目で見ていた

そして、その女はミネアの哀れみの視線に気づいたようだった

「……」

「おう…ミネア…」

その女は救いを求めるような声を漏らし言った

「ごめんね…」

「これでいいかい?」

「マ-ニャは駄目だったけれど…」

「ミネア…ミネアは来てくれるよね?」

その言葉を聞いて

ミネアは少し目尻に涙を浮かべ顔を背けるように歪めた

そして全てを告白するように

そして決意した表情で言った

「私は…私はあなたのことが嫌いだった」

「!?」

その女は驚きの表情を見せていた

今まで嫌われてるなどとは

一切考えもしなかったかのように…

「毎日毎日マ-ニャを庇って私が殴られ…」

その途端その女は反論した

「それはあなたが!」

「あなたがいけない子だったからよ!」

「大事な娘にはちゃんとしつけを…」

「だけど…!」

その女を遮るように再び告白するように言った

「私が毎日毎日殴られ蹴られ…どんな気持ちだったと思う?」

「あなたは一度でも想像したことある!?」

「私の気持ちを!!!」

「そして、あなたが寝静まったころ…

私がこっそり外に出て泣いてたのは知ってる?」

「それにそれに…」

今までで一番感情を最も込めてミネアは言った

「私だけなら…私だけならまだいい!」

「でも゛…」

「初めのころは何とか私がマ-ニャのことを

助けてたから何とかなったけど…」

「マ゛-ニャは…!マ-ニャは…!」

「一人で外で自殺しようとしたこと知ってる!?」

「その時は何とか私が気づいてなんとかなったけど…」

「それにマ-ニャだけじゃない!」

「私も自殺も考えたことあるの知ってる???」

「ねえ……こだえでよ!!!!!」

「……」



しばしの沈黙が流れた

そして、またミネアは言った

「でも…でもね」

「感謝してる部分もあるわ」

「そういう事がなければずっとあなたの子として…」

「幸せに普通の子として育っていたのかもしれない」

「もちろんそれがいけない事だとは思っていないけれど」

「でも、そのことが原因でバ-バラ様に救っていただき…」

「フロ-ラル様に出会いそしてマ-ニャとワタルたちと出会い、

今こうしてこの場に立ってる」

「いいえ…立っていられる」

「あの時からみんなと出会いあそこで

大切なことを教えられた」

「そしてワタルにも大切なことを教えてもらった」

「この事は私にとって一生の宝物」

「いえ…かけがえのない財産!」

ミネアは懇願するような目でその女に言った

「過去のことはもういい…」

「でも私たちは地下に行かなかればならないの」

「何も言わずに通して欲しいの…」

するとその女は言った

「いくら大切なミネアのお願いでもきけるわけないでしょう-!」

ミネアはやはりかという思いで溜め息をついたようだった

「私たちはみんなの大切な思い…

そして大切なな気持ちを背負ってる…」

「行かなければならないの…」

ミネアの表情が険しくなる

「あなたを倒してでも…!」

「いえ…トレア!!」

するとその女は言った

「何をわけのわからない事をまたごちゃごちゃと…」

「それにお母さんを呼び捨てにするなんていけない子ね」

「たっぷりとまたお仕置きが必要みたい」

「ああ…!分かった!」

そうその女…いやトレアは手を叩いた

「そこのボ-ヤがワタルって言うんでしょう?」

「二人の眼差しで分かったわ-」

「この私にいろいろ生意気なことを言ってきたけれど…」

「そこのボ-ヤがいけないのねえ-!」

「そこのボ-ヤを殺して洗脳から解いてあげるわ-!」

「それからたっぷりと元の従順だった良い子に戻してあげる!」

そうトレアは言い放つと目を見開き

叫び声をあげながら俺たちを襲ってきた

ミネアとマ-ニャの長年の呪縛を解き放つためにも

ここで負けるわけにはいかない…!

そう本気で願い俺は言った

「行こう!!!」

ミネア「分かってる!」

マ-ニャ「はい!」

みんな「おう!」

俺たちはそれぞれ武器を構え

トレアの元へ駆け出して行った

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