実験室6

場面は変わって地下へ


「あっ!?」

その女もミネアやマ-ニャを見て気づいたようだった

マ-ニャが声をあげた

「お母さん…」

「!?」

ちょっと待て…!

マ-ニャのお母さんだと!?

こいつは以前言っていたミネアとマ-ニャを

虐待していた母親なのか…!

いつもミネアとマ-ニャは母親に

酷い虐待を受けていたと言っていた

それで…

俺はミネアやマ-ニャの顔を思いだし

その虐待されているであろう

二人の涙を浮かべ必死に耐える姿を想像すると

いてもたってもいられなくなっていた

「きさま--!!」

するとミネアとマ-ニャの母親らしき人物は答えた

「おいおい、あんたは誰ださ-?」

「ふふ…あんたたちは私が知らない間に

男をたらしこむようになったのかい?」

「ちがっ…!」

ミネアがすかさず反論しようとするが

その反論を遮るようにまたその女は話しはじめた

「しかし知らない間に二人とも大きくなったわねえ」

「ドクターベルケル様が大事な実験体が逃げてしまって

それでもしかしたら白魔女を引き連れて

襲ってくるかもしれない…」

「そうおっしゃるから網を張っていれば…」

「それと、まさか黒魔女も引き連れてくるとは…」

「計算外もいいところよ」

「それにしてもあの二人…!」

「万一にも私の出る幕はないって言ってたのに!」

「でも、その事は特別に許してあげるわ」

「こうやって可愛い娘たちに会えたんですもの…」

「お-ほっほっほっほ」

そして突然優しい表情をしてその女は

ミネアとマ-ニャに語りかけた

「今からでも遅くはない…」

「そこのボ-ヤや白魔女、黒魔女たちを殺して

私の所に来れば特別にドクターベルケル様に

許して貰えるように進言してあげるわ」

「ドクターベルケル様は寛大なお方…」

「ふん…ハイデルが何か言うかもしれないけど

そんなものは関係ないわ」

「私の大事な娘だと知れば寛大に許して下さる…」

「あなた達もまさかドクターベルケル様に本気で勝てると

思っているほどバカな子じゃないでしょう?」

「さぁ…いらっしゃい」

両手を広げ邪悪な笑みを見せた

何か逆らえない…

そういう気配を醸し出しているのを俺は感じた

「あっあっ…!」

マ-ニャが動揺していた

過去のことがフラッシュバックしているのだろう

「くっ…!」

ミネアも同じようだった

しばし邪悪な笑みを見せて待っていたが、

それがなかなか寝返らないのを確認すると

途端にその女の態度が変わった

「いらっしゃいって言ってるでしょ!」

「私の言うとことが聞けないの!」

「言うことが分からない子は昔のように

お仕置きしてあげないと分からないのかい!?」

激しくその女はミネアとマ-ニャを責め立てる

「ひっ…!」

ミネアとマ-ニャは怯えていた

そこからその女はさきほど激怒していたのか

嘘のようにまたニッコリと微笑んだ

「……」

二人とも怯えて動けないでいた

「駄目な子ねえ-」

それからその女は溜め息をつきながら言った

「分かったわ…」

「そこのボ-ヤ達も殺さないでいいから

私の元へいらっしゃい」

「あなたたち二人が私の元へ来ればそこのボ-ヤ達も

ここまで可愛いたち達を運んでくれた礼があるもの…」

「特別に見逃してあげる…」

「ねえ…それならいいでしょ?」

「さぁ…おいで?」

ミネアやマ-ニャが一瞬その女の方へ

行こうとしたそぶりを俺は見逃さなかった

「ミネア!マ-ニャ!」

「騙されるな!」

しかし、すかさずその女に反論される

「あんたは黙ってな!」

凄い眼力で腰を落としそうになった

ミネアやマ-ニャが子供の頃逆らえなかったのも

理解できた気がした

しかし、ここで負けたなら本当に

ミネアやマ-ニャはあっちへ行ってしまう…

そんな予感がしたのでここは引くわけにはいかなかった

「ミネア!マ-ニャ!」

「思い出すんだ過去のことを!」

「その女はお前たちに何をしてくれた!?」

「日頃辛い毎日をしていたんじゃないのか!?」

「これは家族の問題だ…」

「俺が出るところじゃないだろう…」

「しかもその場にいなかった」

「あんたに私たちの何が分かるのって思うかもしれないだろう」

「それじゃあ何故ボ-ヤが…!」

その女の声を遮るようにして言った

「でもあの時俺たちに言った言葉はウソだったのか!?」

「!?」

「あの白魔女の総本山で涙を流しながら話してくれた言葉はウソだったのか!?」

「二人にしてみればかけがえのない

ただ1人しかいない母親だろう」

「でもあの事は二人は本当は分かっているはずだ」

「さっき実の母親と出会ってすぐに…!」

「心の奥底ではずっとあの言葉を待っていたはずなんだ!」

「さっき二人の前に現れた時にあの女は何て声をかけた?」

「あることが理由でその女から離れたんだろう?」

「本当に反省してるならまず母親の方から

言うべき言葉があるんじゃないのか?」

「甘い言葉に騙されるな!」

「それに俺たちのことは心配しなくていい!」

「ドクターベルケルは魔界軍の幹部だ…」

「確かに恐ろしく強いだろう」

「しかしこんな非道なことをする奴を許すわけにはいかない!」

「今は無理だろう…」

「しかしいずれ力をつけてあいつを倒す!」

俺は気持ちをこめてそう精一杯叫んだ

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