ムズガルド帝国編16


俺たちはジュニアと相対する


そしてジュニアは俺たちに言った


「ようこそ」

「我が城へ…」


「ジュニア…」

バージェットはたじろぐ


ジュニアはバージェットを見つめ言った

「まさか…生きていようとは思わなかったぞ」

「どこかで野たれ死にでもしてるのかと思っていた」

「まぁ野たれ死んでくれたほうが殺す手間が省けて楽なのだがな」


「あいにく丈夫なんでなぁ」

バージェットは冗談気味に言う


「はははは」

「まぁ強がるのは言いがお前たちは捕らわれの身…」

「お前たちの命運はこの私が握っているということを忘れてもらっては困るな…!」


「くっ…!」

俺たちはジュニアの圧倒的な迫力に押されていた


しかしバージェットはその中でも怯まない


バージェットはジュニアをまっすぐ見つめ言った

「ジュニア…」

「話がある」


「ほう…?」

ジュニアは興味をひくそぶりを見せる


俺たちはあの話をバージェットが切りだそうとしているのだと感じた

それにジュニアの反応も悪くない

俺たちは淡い期待をもつ


しかしその淡い期待は脆くもすぐに打ち砕かれてしまう


ジュニアは笑う

「くくく…」

「はははははは」

「逆賊のお前の戯言など私が本気で聞くと思ったか…?」


「あのとき…」

「お前が裏切り、皆がどれほどの思いをしたか…逆賊の貴様には分かるまい!!!!!」

「そして私がどれほど絶望したのか貴様には分かるまい!!!!!!!」


「…………」

バージェットは何も言わずじっと騙っている


「お前が突如消えてから、切り刻んでおけばとどれほど後悔したか…!!!」

「だがその後悔も今ようやく果たせる…!」


ジュニアはバージェットを侮蔑し厳しく見つめる

「そして貴様の言葉など聞くにも値せん…!」

「これ以上の話は愚問だ…」

「顔も見たくもない」

「これからお前たちの公開処刑を行う」

「死ぬ間際までこの地に来たことを後悔しろ…」

「そしてお前たちの悲鳴を私に聞かせろ…!!!」


「ちょっ…!?」

俺はいきなりのことで割って入ろうとするジュニアに一喝されてしまう


「ホワイト風情がこの私に話しかけるな!!!」


「!?」

俺は何も言えなかった

それはまさにに王の言葉だった

ジュニアのあまりの迫力に固まってしまう


そしてジュニアは言った

いつのまにかゴブリン兵に囲まれている

「お前たち…こいつらに拘束具をつけい…!!!」

「はっ…!!!」


俺たちは瞬く間にして拘束具を付けられてしまう

ツバサは言った

「えっ…?」

「ち…か…ら…が…」

「出な…い…」


ヨサクも言う

「は…い…っす…」

「縛りつけられてるとはいえ…」

「ち…か…ら…が…」


ジェニ-も同じようなことを言った

「魔…力…が…」


そのときバージェットは説明するように言う


「ああ」

「この拘束具は特別製だ」

「凶悪な捕まえた囚人たちを逃さないよう力…」

「そして魔力…」

「この2つを制御する力がこの拘束具には備わっている」


「そ…ん…な…」

ツバサは絶望した顔になる


「と…いう…こ…と…は…」

そしてジェ二-は恐怖にひきつった顔になり言った


バージェットはそれに答える

「脱出不可能だ」


「そ…ん…な…」

みんなに絶望の顔が浮かぶ


「バージェット様何か策は…!?」


残念ながらバージェットは首をふる


しかしその時突如笑いだした者がいた

ジュニアだった

「バージェット…だと…?」

何がおかしいのかよく分からない

しかしそれはジュニアにとっては滑稽なことらしかった


そして言った

「貴様…名前まで変えたのか…?」


「えっ…?」

俺たちはジュニアが何を言っているのか理解できず固まる


しかしジュニアは話を続ける

「くくく…」

「名前さえ変えれば過去の罪が消えるとでも思っているのか…」

「そこまで堕ちたか!!」

「いやそれとも誰にも知られたくないか…」

「ふん…!」

「まぁそんなことはどうでもいい」


ジュニアは一呼吸しそれから改めて俺たちを厳しく見つめ言い放つ

「お前たちの処刑はこれから48時間後…!」

「そして知られている最も残忍な方法でお前らを処刑してやる…!!」


「あっ…そうそう」

ジュニアは思い出したように言う


「お前たちを匿ったホワイトゴブリンたちや老婆もな」


!?

俺たちに戦慄が走る


「なっ…!?」

「話が違うだろ…!!!!!」

バージェットは叫ぶ

「貴様ぁああああ------!!!!!!」


「はぁ-っはっはっ…!」

「その顔を見たかったぞ」


「お前たちはお互い拷問されながら見合いそして殺されていくのだ…」

「血の悲鳴を聞かせろ…」

「血の涙を出せ…!」

「血のドクロを私によこせ…!!!」

「くくく…」

「はははは…」

「あ-はっはっはははは…!!!」

ジュニアは大きく目を見開き邪悪な笑みを見せている


俺は歯ぎしりする

バージェットの信じたジュニアとはこんな男なのか…!?


そんな俺の思いを無視するかのように…

そして確認するようにジュニアは言った

「それと…!」

「まさか逃げられると思うなよ…?」

「もうすでに準備は整えてある」


そして叫ぶ

「地下層囚人エリア…第7士団長アザ-ラ!」

「下層エリア…第5士団長ガスタフォ-ク!」

「中層エリア…第4士団長デスパイル!」


「上層エリア…第2士団長サイファ-!」


「他の士団長は残念ながら今ムズガルド城にはいない」

「しかし鉄壁の布陣だ…」

「貴様たちには絶望しかないのを理解しろ

「そして殺されるまでの間…恐怖におののき泣き叫ぶがいい!!」


「話は以上だ…!」

そう言い放つとジュニアは立ち上がり俺たちに背を向け玉座から離れていく


そしてふと立ち止まり俺たちに背を向けながら言った

「あの日の約束を果たせ…!」




俺たちは絶望のどん底へと突き落とされる

これからの俺たちの未来が容易に予想できた


そしてジュニアは俺たちの前から消えて行った


するとタイミングを見計らったかのようにビネガ-は言った

「ゲハハハハ」

「今からお前たちを拘置所へ案内しよう」

「せいぜいしばし最後の時間を楽しめい…!」


そして俺たちは別々の拘置所の個室へと送れられていく


俺たちは絶望に捕らわれ別れるさいにも誰も何も言わなかった


そして1日が過ぎ俺たちはある場所に一ヶ所に集められる


地下の監獄へと連れていかれるらしい


俺たちはそのまま連れていかれる


その時バージェットは誰にも気づかれぬようにワタルにコソリと言った


「なぁワタル…」

「なんだ…?」


バージェットは考えこむようにして言う

「何か…」

「違和感を感じないか…?」

「違和感…?」

俺はバージェットが何を言おうとしているのかよく分からない


しかしバージェットもその意味をよく分かってないらしかった


バージェットは言う

「ここに来てから何かがおかしいと思うんだ」

「…?」

「それが何かは俺には分からない」

「だが何かが引っかかるんだ…何かが…」


「俺は別に何も感じないが…」


「そう…か…」

バージェットは諦めたように言う


その時また突然何故かあの夢のことをを思い出す

「ちっ」

「こんなときに突然何でまたあの夢のことを…」



場面は代わり…

玉座に息を切らしながら走りよっていく足音が聞こえる

「はぁ…はぁ…!」

激しい息づかいだった


そしてその者は玉座に通じる扉をバン…!と勢いよく開けたかと思うと、

その玉座に脚を組み悠々と座っているジュニアに叫ぶ


「どういう事ですかジュニア様…!?」

ウェリタスだった


先ほどまでウェリタスは騒ぎを起こすのを防ぐためか眠らされていた


しかし目を覚ましバージェットやワタルたちの話を聞きつけ急ぎジュニアの元へと駆けつけてきたのである


そしてジュニアに急ぎ歩みよりながら懇願するように叫ぶ


「あの者たちを処刑するとはやり過ぎです…!!」

「それにあの者たち…特にバージェットと呼ばれる者は人食いドラゴンから私を救いだしてくれたんです…!!」

「それに短い間でしたが私は彼らと行動を共にしました…」


ウェリタスは胸に手をあてジュニアに向かって断言する

「彼らは悪い人間たちではありません…!」

「この私が誓って保証します…!!」

「それに彼が逆賊だなんて何かの間違い…」


「どうか…」

「どうか゛…!?」

ウェリタスはジュニアに目に涙を浮かべながら懇願するように必死に叫ぶ


しかしそれでもジュニアの表情は何も変わらない


そこでまた声を詰まらせな叫ぶ

「私は…」

「私は何故かあの者(バージェット)を見ると胸が痛くなるんです…」


「それに…」

「最後にあの者と別れたときに気づきました」

「私はあの者を愛とおしく思ってしまいました…」

「別れると思ったとき心が張り裂けそうになりました…!」


「それにあの者は言っていました」

「詳しくは何も言いませんでしたがジュニア様と面識があると…」


今まで無表情だったジュニアの顔がピクリとする


そしてウェリタスは言った

「お願いします…ジュニア様」

「あの者を知っているんでしょう…?」


思いを込めて叫ぶ

「お願いしますあの者のことを教えて下さい…!!!」

「そして何故そのことを私が忘れてしまっているのかも゛…!!??」


「ふぅ…」

ジュニアはため息をつく


しかしそのまま無言でその場を去っていく


「ジュニア…さ…ま…」

その場に何とも言えない悲壮な声がぽつりとする


そのときジュニアは言った

「後悔するでないぞ…」

「えっ…?」

「もしもバージェットたちがこの場にたどり着けるならそなたに教えてやらなくもない」


「それじゃあ…!?」

ウェリタスは目を輝かせ嬉しそうにする


しかし後にある疑問が沸いてくる


「たどり着けたらって…?」


ジュニアは話を続ける


「もしバージェットたちが上層を突破しこの場に来よう者ならウェリタス…」

「お前に中央の塔の最上階に登る許可を与えよう」

「何もお前がムズガルド帝国とあの者たちを天秤にかけ戦うことはない」

「それに…そこに全ての真実はある」

「そしてそこに住んでいる大婆に話せ」

「その真実について知っているのは私と大婆の二人だけだ」

「真実を知る手助けをしてくれるだろう」


「まぁこの場にたどり着けるわけがないがな…」

「ふっ…」

ジュニアは自傷気味に笑う


「それって…」


「上層エリアにはサイファ-がいる」


「サイファ-が!?」

ウェリタスは声を粗げて驚く

そしてひどく落ち込んだ


バージェットたちはここにたどり着けないと思ったようだった

サイファ-とはそれほどまでの使い手なのだろうか…?



そして改めて思った

「ジュニア様…」

「あなたは一体何を考えているの…?」



時は少しすぎバージェットたちはもうすぐ地下の牢獄へ来ようとしていた


そしてバージェットは焦る


「もし地下の監獄へ行けば万に一つも脱獄の道は閉ざされるだろう」

「第7士団長アザ-ラ…あいつは監獄長だ」

「脱獄なんか見逃すはずがねえ」

「それにここから処刑台へ行くときはもっと士団長の付き添いがあるはず…」

「120パ-セント逃げれない」


そしてバージェットは頭をフル回転させる


「この違和感に俺たちが助かる何かが隠されているはずだ…」

「考えろ…」

「考えろ……!!」


しかし時間は無情にも刻一刻と過ぎていく


そして監獄へ通じる入り口まで来てしまった

そこで目隠しをされ中に入れられてしまう


バージェットは結局何も答えが見いだせず終わったと思った


しばし沈黙の時が流れる

死へのカウントダウンがバージェットたとを襲っていた


そして…

しばらくすると何故か突然目隠しと拘束具が外れる

自動で外れるようになっていたようだった



「えっ…?」

「な…ん…で…?」

「これ…は…」



バージェットたちは今おこっている現象が飲み込めない


そして目が慣れてきたころ地下牢を見ると監獄だった

とてもじゃないが脱獄なんて出来そうもない

誰もがそう思った



しかし突然バージェットは笑い出す

「くくく…」

「はははははは」

「あっはっはっはっ!!!!!」


ワタルたちはバージェットの心が壊れてしまったのかと思う



「そうか…」

「そういうことか…!!」

しかしバージェットは謎が解けたように言った



場面はジュニアとウェリタスに戻る


そしてジュニアは言った

「道は示しておいた」

「ここまでたどり着けるかはあいつ次第だ…」


そしてジュニアは心の中でバージェットに対して強く思った

「ジェットよ…」

「お前がこうなると分かっていながら何故戻ってきたのかは知らぬ」

「何を語ろうとしているのかは知らぬ」

「だが伝える言葉があるのだとすればこの場所までたどり着いて見せろ…」

「信じあえる仲間とともに」

「そして私のいるこの場所まで…!!!」

「我が最強の家臣団が相手をしよう!!!」





場面は変わり監獄へ

「くくく…これも運命ってやつか」

バージェットは笑っている


そしてジュニアはキッ…と突然決意した表情になりジュニアがいるであろ頂上を見て叫ぶ


あの夢を思い出しているようだった

「俺を試そうっていうのか…」

「それがお前の答えかジュニア…」

「いや……」



「ジャキ!!!!!」


ジャキとはゴブリン国の王・・

ジュニアのことだった

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ちょっと珍しいゴブリンと仲間と絆の物語 ~星の夢のかなたへ~ だんご大家族 @tag_nation

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