第1章 水無月学園と俺 002
次の日、水無月学園の入学式の当日。
俺はもちろん妹達に起こされて、制服に着替えた。
「それじゃあ、いってくるな」
「兄ちゃんいってらっしゃーい」
「いってらっしゃ~い」
水無月学園には中等部も存在する。妹達はそこに在学していているが、始業式は明後日らしい。
ずるいぞ、妹達よ!
そんなことを思いながら電車に乗った。時間が時間なせいで立ち乗りだったが、2駅だとすいてても立ってたほうが楽な気がしなくもなかった。
電車を降りて駅をでると、同じ制服をきた奴もかなりの数、歩いている。
果たして先輩なのか後輩なのか(中等部と制服は統一で違いは胸のバッチだけで)同級生なのかすら一目ではわからない。
「おはよう、如月さん!」
「ん?」
だが、そんな中聞き覚えのある声で後ろから話しかけられる。その声は俺の通っていた魔法・魔術一切関係ない公立中学での友人女子であり、かなり厄介な人物の声だ。
「なんでお前がいる」
「如月さんがいる所に私ありに決っているだろう。私は如月さんの奴隷なのだから!」
「人聞きの悪い事を人が多いところで人に聞こえる音量で言うんじゃねえよ!」
「人の三段活用……! さすが、如月さんだ!」
こいつは1年だけ飛び級という不思議な経歴を持つ同級生であり、後輩の
実際の年は俺の1つ年下なんだが――かなりの変態である。
「私が一歩進むために尽力してくれた如月さんと一緒の高校に通えるとは、濡れてしまいそうだ」
「なんでだよ。と言うかまじでお前、落ち着け!」
「しかし、この程度のことは中学ではいつもの事だったではないか」
「それなら中学でいつも俺がやめろと突っ込んでいたことも思い出せ!」
もう、周りの人から変な目向けられちゃってるし。クラス一緒とかだったらどうするつもりだ。
「ふむ、そこまで言われては仕方ない。では入学式会場まで一緒に行こう」
「ああ、それでいいよもう」
こいつがなんで俺にまとわりついているかは頭が痛くなるので今は深く語らないが、おそらくいつか語ることになると思う。
その後は一応、順調に進んで入学式を乗り切ることができた。
式後はクラスでオリエンテーションということになって、移動を済ませる。
まあ、当たり前だが知り合いなんているわけもない。ただ、中等部から上がってきた奴らなのかすでにグループができてるような奴らもちらほら見かける所を見ると、俺は真の意味での新入生組でのグループに入れるように動かなければいけないな。
「はいはい、それじゃあ席つけ~」
どうやら、七々原とはクラスは違うようだ。
「俺はこのクラスの担任になった~え~……大谷だ。とりあえず1年間よろしく頼む。それでこの学園だが知っての通り術式師の養成ということで授業もそっちが中心になる。魔術や剣術などのつまりは
その後は自己紹介が淡々と進んでいく。得意魔術を言った奴は中等部から上がってきた人間が留学生で、得意魔術を言わないのは新入生と考えていいだろう。
かくいう俺も魔法については生まれつきで知ってるが魔術はからっきしだしな。
ちなみに席順はかなりバラバラで五十音順ではないらしい。そして俺はトリのひとつ前、つまりは窓際の一番後ろのひとつ前の席だ。
「
とりあえず、無難に済ませておいた。
そして最期のトリだ。大げさなことはせずハードルはある意味下げておいたぜ。だから、思う存分暴れていいとか――
「リリア・レイハートです。海外から留学できました。得意魔術は火と光です。よろしくお願いします」
うん、無難だな。というか留学生か。
俺は少しさり気なく後ろをちら見してみた。そこには制服を身にまとった金髪の少女がいた。
明るい系の性格な雰囲気だけど緊張してるのかな。
まあ、その日の授業はその自己紹介の後に、今後の日程の説明を受けて終了となった。
ていうか昼前で終わっちゃったよ。
「あ、そうだ。如月、この後理事長室にこい」
「え? まあ、わかりました」
「おう」
教室から出て行く時に担任がそう言った。
理事長はなんでそんなに俺に構うんだろう。それとも自意識過剰だったりするのか?
まあ、とりあえずいくだけいっておくか。
面倒くさいので荷物は教室に置いて理事長室に向かったんだが、まさかこの判断が後にあんなことになるなんてこの時の俺は知らなかった――とかフラグを立てておく。
ただし七々原、お前のフラグは勘弁な。
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