3-3 ―淡雪、締里vsフレア―

         3


 似ている……。

 アリーシアは目の前に現れた異国の青年を見て、強くそう感じた。

 鏡でみている自分の顔と共通している箇所が多い。

 そして彼は平然と言った。

 妹に逢う為――と。

 淡雪あわゆきが恐い声で訊く。

ではないですか。なぜ貴方が妹君の前に。いえ、それよりも御身のお立場からすれば、どうやって入国なさったのですか」

 国内の密入国防衛システムは優秀だ。

 それを突破できるルートは『禁じ手』として限定されている。いわば国家すら容易に手出しができない領域という事になる。

 淡雪の脳裏に、ルシアの警句がリフレインした。

 顔から音を立てるように血の気が引いていく。

「貴方はまさか!? 一国の王子という立場にありながら、あの【エルメ・サイア】と繋がっていたのですか!!」

 淡雪の弾劾だんがいに、アリーシアは後ずさった。

 青年は飄々と否定する。

「誤解だよ。全て誤解だよ、堂桜のお姫様。僕は単なる観光客さ。名前はエルビスだ。そして隣の彼女は僕のステディってわけだ」

「ワタシは彼のお目付役のフレアと申す者です」

「ステディって言ったのに、つれないね、お前も」

 エルビスが偽名だとアリーシアは知っている。いや、国際的な話題の中心にいる人物の顔だ。当然、その名だって嫌でも記憶してしまう。そういう人物なのだ。

 内乱で揺れるファン王国にあって、反体制側についている第一王子――


「あ、ぁぁ、私、は……私の、親は、ッ」


 真実に到達し、アリーシアの全身がおこりのように震え始めた。

 その様子を、エルビスは楽しそうに眺めている。そして告げる。

 淡雪と締里しまりが誤魔化しの言葉を探しているのを嘲笑いながら、容赦のない真実を。


「お前は今まで僕たち王族が背負ってきた祖国に対する責務とは無縁で、他国の一介の市井として気楽に生きることが許されていたけれど、――」



    ――アリーシア・ファン・姫皇路ひめおうじ――



「片親とはいえ、同じ血を分けた僕の妹にして、ファン王国の王位継承者よ」


 その言葉にアリーシアは両膝をガクリと折り、床にしゃがみ込んだ。

 決定打だ。

 連日報道されているファン王国の内乱騒動と、自分の状況変化がリンクしていて、なおかつみながアリーシアを姫と呼ぶ。この事実を推察できないはずがない。

 ただ思い至っていないフリをして誤魔化していた。

 自分がファン王国の姫だと知ったところで、

 せめて自衛の為の努力を――と、大局から目を背けていた。

 しかし、それももう……

「はははは。その顔だと僕の言葉を信じてくれたみたいだね。確かに父にお前は似ているな。この僕よりも。ニホン人というエコノミックアニマルの腹から産まれたとはいえ、お前は僕の異母妹であり――現時点では次期女王の最右翼だ」

 呆けた顔でアリーシアは異母兄を見上げる。

 異母兄あにの目は、冷たかった。

 エルビスと仮名を名乗る異母兄あにが、第一王子であるその血統にもかかわらず、王位継承候補から除外されているのは、内乱で反体制側につき国民の反感を買った事が原因だと、アリーシアも知っていた。

「だからといって、私が次の王様だなんて」

 つい先程まで孤児院で暮らす身寄りのない女子高生だったのだ。

 現体制である王政派に、自分以外の王位継承者――つまり王族がいるはずである。

「ああ。それについてはね」

「そこまでです!!」

 淡雪が声を張り上げる。

「王子。それ以上は言ってはなりません」

「もう遅いよ。どうする妹よ。ここから先を聞くのはやめるか?」

 周囲の視線がアリーシアに集中する。

 アリーシアは目を瞑り、二秒ほど熟考し、瞳を開くとゆっくりと立ち上がった。

 異母兄あにを真っ直ぐに睨む。

 その視線を、エルビスは不愉快そうに受け止めた。

「話して下さい」

 淡雪は浅い角度で項垂れた。締里はニュートラルな態度を崩さない。

「いや単純な話でね。報道されていないけど、実は王家の直系はもう三人しか残っていないんだよ。現国王である父上。そして国民から継承権を事実上剥奪された僕。残ったのは、そう、父とニホン人の間に産まれた妾腹の姫である、お前、というわけさ」

「――な――」

 報道とは異なる衝撃の事実に、アリーシアの目が見開かれる。

 エルビスの言葉が嘘でないのならば、つまり王政派側の王族が……

「どうしてそんな事に?」

「さあ? その件に対して僕は直接的に関与していないし」

 エルビスは肩を竦めてしらばっくれた。

 淡雪が語気を強める。

「その件に関しても堂桜側としても事実確認を急いでいますが、どうやら単純に【エルメ・サイア】の力によるところが大きいようですね」

「だから僕は知らない」

 とぼける異母兄あにに、アリーシアは構図を悟った。

 エルビスの描いたシナリオ、もしくは彼を引き込んだ首謀者に吹き込まれた計画では、【エルメ・サイア】によって王位継承のライバルを消し、父を王位から引きずり下ろし、そのままエルビスが次期国王に収まるはずだったのだ。

 現体制が破壊され、体制が共和国となっても王族が消えるわけではない。

 王という権力を半減されても、彼は早急に王という立場が、欲しかったのだ。

「貴方は国の体制よりも、自身の立場が大事なの?」

「のうのうと市井の暮らしを享受していたお前がそれを言うか」

 兄と妹の視線がぶつかった。

 エルビスがアリーシアに手を差し伸べる。

「一緒にこい。お前に次代の王など無理だろう? お前が僕の側につけば、愚かな国民を説得してお前を王家の血族というしがらみから解放してやろう」

 その誘い文句に、淡雪が身構えた。

 アリーシアはハッキリと告げる。

「断るわ。王がどうとかは、まだ分からないけど、兄さんとは一緒にいけない」

 その言葉尻と同時だった。


「ニホン人の分際で、この僕を兄と呼ぶなぁ!!」


 憤怒に赤く染まった顔で、エルビスは狂ったように喚きだした。

 唐突な豹変だ。

 身振り手振りのオーバーアクションを交えながら、急激に理性を失っていく。

「片方しか僕たちファン人の血を引かないくせに、何が次期女王だ! ふざけやがって!! ちきしょう! お前さえ、お前さえいなければ――ッ!!」

 言葉は後半からニホン語ではなく、ファン王国でのみ使用されている母国語になっていた。

 アリーシアは異母兄あにの罵倒を、目を背けずに唇を噛み締めて受けとめる。

 罵りの言葉が終わり、エルビスは再びニホン語で、フレアに命じた。

「残念ながら交渉は決裂した。フレア、聞き分けの悪い妹を力ずくで連れて帰るとする」

 それは戦闘開始と同義だ。

 淡雪は躊躇なく【DVISデヴァイス】を起動させる。自身の【基本形態】である『白銀の吹雪』を【結界】として身に纏った。その名は――


「へえ。それが噂に名高い《クリスタル・ストーム》ってやつか。なるほど綺麗だね」


「綺麗なだけではありませんよ」

 眦を決し、【結界】を制御するプログラムのパラメーターを調節していく。施術エリアはデフォルトのまま。基本性能である温度低下の影響範囲から、アリーシアと締里、そしてエルビスを除外した。

 対象範囲にセットしたフレアであるが、基本性能である温度低下に対して、魔術抵抗レジストを許してしまった。相手はかなりの実力を秘めている戦闘系魔術師ソーサラーだ。出力は現時点で安定させて、魔力供給をキープする。基本術式はオールグリーン。銃弾・小型ミサイルなどの物理兵器の攻撃を含めた自動サーチ・自動制御項目および派生魔術の待機・準備も完了。テロ・災害対策用の施設【結界】とは異なり、戦闘用の【結界】はこれだけの制御をリアルタイムで行う必要があるのだ。ゆえに、通常では【結界】という大魔術は複数人で起動させる。

 締里も【AMPアンプ】である魔銃 《ケルヴェリウス》を、両手持ちで構える。


「動けば――撃ちます。殺しはしませんが、重傷程度は覚悟してもらいますよ」


 堂桜の直系として幼少時より厳しい訓練を重ねている淡雪であるが、これが初の実戦だ。

 状況と相手に不足はない。

 エルビスは二人の威嚇を無視し、空を仰いだ。

「なあ、フレア。連中は? まさかサボっているのかい?」

「どうやら楯四万たてしまの弟が邪魔をしている模様です」

「使えないな。相手は一人だろ」

「あまり派手に暴れられる状況ではありませんので、ご容赦を」

「大丈夫なのか」

「充分です。部下に命じていたのは『外部から干渉しようとする者を遠ざけろ』でしたので。それに楯四万弟以外にも邪魔が入った可能性もあります。いずれにせよ――この場に邪魔が入らない事が肝要であり、《インビジブル・プリンセス》を拉致するには充分な状況」

 フレアがエルビスの前に歩み出た。

 真っ赤な口紅をひと舐めし、「ACTアクト」と呟く。


 足下に出現した魔方陣より、炎を纏った紅い大蛇が召喚された。


 同時に、淡雪が雪の結晶の束を、光線のように飛ばす。

 相手の使用エレメントが【火】と判明した瞬間、《ケルヴェリウス》のカートリッジを【水】属性に入れ換えた締里が、躊躇のない三点撃ちをおこなった。

 ぎゅるるるるるぅん。コイルのように正確な同円心で、紅い大蛇がフレアに巻きつく。

 その円筒の壁に防がれた氷弾の攻撃は、音もなく蒸発した。

 大蛇は同円心形状を解くと、甘えるようにフレアの身体を這いずり回る。


「これがワタシの炎の【魔導機術】――その名称は《レッド・アスクレピオス》」


 パワーヴィジョン型に類する【基本形態】である。遠隔操作のみならず自律機能さえ備えている独立した魔術幻像は、高レヴェルの戦闘系魔術師ソーサラーにしか扱えない。

 もの凄い存在係数を感じる。あくまで幻像であるが、実在物質を上回る実在感だ。

 圧倒的な魔術的パワーだ。淡雪の【結界】の冷気などものともしていない。

【基本形態】の破壊でも相手の魔術を停止できるが、この《レッド・アスクレピオス》を破壊するのは至難を極めそうだ。おそらく術者をKOした方が早いであろう。

 ごバぁっ。

 紅い大蛇は、口腔を開けると『炎の弾』を吐き出した。

 すかさず【火】属性にカートリッジをチェンジした締里が、魔銃の高速連射で迎え撃ちにいく。超次元の電脳世界における魔術オペレーションによって、迎撃ポイントを演算した。そこへ照準してトリガーをノック。

 ズダダダダダダァンッ!

 精確無比な射撃であったが、威力を相殺できずに、散弾と流れ弾が淡雪へと伸びる。

 流星群のような紅い線。


「――《ダイヤモンド・インターセプト》」


 キン、と軋みをあげて、淡雪の前面空間が瞬間的に凍りつく。

 局地型の防御【結界】だ。

 淡雪は【結界】をベースに、下位互換として高密度の【結界】を展開したのである。それは警戒レヴェルを、自動・自律と術者の認識に二層化して個別制御する、超一流の術式だ。

 ごごごごごごごごごぉぉおおおッ!

 連鎖反応のような爆音が連なるが、七色に光を反射する凍りついた遮蔽壁が、炎の流星群をシャットアウトする。

 淡雪の魔術出力が、フレアのパワーを上回り、完全に受けきってみせたのだ。

 双方が展開している【ベース・ウィンドウ】には、互いが受けた魔術効果の残滓をスキャンおよび解析した、相手の魔術理論の一端が表示されている。その結果をもとに、より有効な魔術攻撃にする為の対応アルゴリズムを演算・構築中だ。むろんリソースの全てを電脳世界には注ぎ込んでいない。有視界と現実時間で対峙しているのだから。

 一瞬の間に行われた激しい攻防に、アリーシアは認識が追いつかない。

 すでに淡雪は『雪』の【魔導機術】で反撃に移っていた。

 締里は後方から銃撃で淡雪を援護しつつ、アリーシアに気を配っている。

 そんな二人を相手に、フレアは『炎の大蛇』を巧みに操作し、一歩も引かない。


 爆音と光と爆風が乱れ混ざる。

 熱気と冷気が交錯する。


 大蛇が淡雪に肉薄すると、締里の弾丸が遠ざけ、淡雪がフレアに魔術を仕掛けると、大蛇が主へと戻り防御する。そしてフレアは、締里に魔術攻撃やナイフを投擲する。淡雪にはナイフは用いない。【結界】によって物理攻撃であるナイフは自動で止められるからだ。仮にナイフを使うのならば、投擲ではなく打撃に則した斬撃か刺突になる。

 基本的にはこのパターンを繰り返しだが、超速で目まぐるしく攻防を入れ替えながら、使用する魔術を巧みに変えたり、フェイントを入れたりするのだ。

 二対一にも関わらず、フレアは一歩も引かない。

 恐るべき実力である。

 一級品の戦闘系魔術師――【ソーサラー】同士の本気の激突を間近で目にして、アリーシアは固まっている。

 そんな異母妹いもうとを、エルビスはニヤついた顔で観察していた。


         …


 校庭の林の中。

【雷】属性を刃に纏わせた【AMPアンプ】の剣――名称 《ファン・デラ・クルセイダー》を振るう羽狩はかりは、追い詰められていた。

 黒いビジネススーツを模した戦闘服【黒服】を装備している集団と交戦中だ。

 男達は体格から顔つきまで、全てが規格品のように揃えられていた。

 通称【ブラック・メンズ】である。

 一度に三人以上を相手にした瞬間もあるので、確実に三名以上の一個兵隊だが、それでも時には、分身しているたった一人を相手にしているのでは――? と錯覚する。

(なにを、やっているんだ!)

 羽狩は自分を叱咤する。

 敵集団は【雷】属性の魔術を使用していた。

 ゆえに羽狩も刃に【雷】を宿しているのだが、効果は芳しくなかった。

 雷撃を放っても、放った相手とは別の【ブラック・メンズ】が雷撃で相殺してしまうのだ。

 ほんの一瞬前まで、二人を相手にしていた。

 しかし今、羽狩は一人きりである。

 焦躁感が羽狩を襲う。

 どうして自分に援軍が来ないのか。そして【ブラック・メンズ】の何人かは、すでに屋上へと向かっているのだろうか。姉と堂桜淡雪は《隠れ姫君》を護れているのだろうか。

 唐突に襲われたのだ。

 それはいい。こうやって隠れていた刺客に対しての囮になる事が、羽狩の本当の役割である。

 しかし囮になっている時間が長過ぎる。援軍はどうなっている。

(まさか――!?)

 ファン王家内で、何かパワーバランスに変化があったのか。

 加えて、堂桜一族は本当に統護と淡雪しか《隠れ姫君》に護衛をつけていないのか。

 決断する。

 刃の属性を【風】に換えようと。その為には属性を司る、柄に埋め込んである宝玉を入れ替える必要がある。羽狩は構えを崩さないまま、柄から金色の宝玉を取り出した。

 次の瞬間には、透明な宝玉を入れているはずであった。

 だが、その一瞬を敵は見逃さなかった。

 ギュぅぅゴガォっ!! 雷撃が四方から襲ってきて、羽狩ではなく《ファン・デラ・クルセイダー》を撃った。

 属性を発揮できないただの刃では雷撃を防御できず、魔術剣は遠くへ飛ばされてしまった。

 愕然となる羽狩。

 やはり極限の疲労によって、判断力と動きそのものが鈍っていた。

 ベストの自分ならば、こんな失態はありえない。

 いや、そもそも得物が手から失われたのならば、すぐに徒手空拳での魔術戦闘に気持ちが切り替わっている。

 しかし今の彼は、精神的に切り替えるのに、約二秒を要する状態である。

 二秒という時間は、戦闘時においては致命的な長さだ。

 今度は雷撃ではなく、八名もの【ブラック・メンズ】達が羽狩に殺到した。

 八つの打撃が、羽狩を打ちのめそうとした、その瞬間。


 羽狩の姿がかき消えた。


 同士討ちを避け、獲物がいた場所を中心に再び散開する【ブラック・メンズ】達。

 彼等の視線は一点に手中している。

 少女のようにお姫様だっこされている羽狩は、自分を抱いている相手に訊く。

「お前は……なんでだ?」


 相手はメイド服を着ている人形めいた少女であった。


「ワタシをご存じないと」

 一瞬ではあるが、羽狩はメイド少女の人間離れしたあまりの美しさに見惚れてしまっていた――が、我に返る。

「いや、知ってはいるけどさ」

 当然ながら情報は与えられていた。

 フルネームは、ルシア・A・吹雪野ふぶきの堂桜どうおう那々呼ななこ守護者ガーディアン。そして――

「そうか。君が指揮する【ブラッディ・キャット】が、《隠れ姫君》護衛をサポートしているのかよ――《アイスドール》」

 恐ろしいまでの美貌だ。惜しむらくは、整い過ぎている為か、生命感に乏しい事か。

 羽狩の言葉にルシアは首を横に振った。

「いえ。単にご主人様を迎えに上がったら、たまたま目についたものでして」

「え」と、羽狩は目を丸くした。

 ルシアは宝石のような双眸で、敵集団を見回した。羽狩をそっと降ろす。

「少しので使い切りましょうか」

 彼女はフリル付きエプロンからバターナイフとペーパーナイフを取り出した。

 パキパキパキィィ、と不気味な音があがり、ルシアを中心として周囲の温度が下がる。


 右手のバターナイフと左手のペーパーナイフの刃が巨大化した。


 いや、正確には外層として氷の刃が出現したのだ。

【ブラック・メンズ】の一人がスローイングナイフをルシアの眉間へ投擲した。

 ナイフがルシアの眼前に迫った、その刹那。

 鋭い弧を描いた二つの氷刃が、閃光のようにクロスする。

 ほとんど無音だった。

 弾き返されるのでなく、スローイングナイフが三つに分断されていた。

 その光景に刺客達がどよめいた。

 左右の腕を交錯させたまま、ルシアは宣言する。

「ついでです。倒すのは面倒ですが、追い払うくらいならばサービスでやってあげます」


         …


 脳内へ直接流れ込んでくる微少な雷撃を、フレアは感知した。

 むろん展開している電脳世界での事だ。

 独自パターンで暗号化されている部下からの魔術的な電子信号であり、即座に解読する。

 フレアは苦笑を漏らす。

「――王子。どうやら時間切れのようです」

 戦闘継続の意思はない、とフレアは《レッド・アスクレピオス》を解除した。

「時間切れって?」

 不満そうなエルビスに、端的に説明する。

「【黒服】部隊の手に負えない相手が出現した模様です。部隊には退避許可を出しました」

「わかった。今日のところは大人しく帰ろうか」

 納得したエルビスは、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま、出口へと歩き始めた。

 防衛戦はしても倒しにはこない――と、わかっているフレアも後に続く。

 淡雪と締里も戦闘態勢を解いた。

 ただ力なく立ち尽くしているだけの異母妹いもうとに、エルビスはすれ違い様に囁いた。

「じゃ。また後日な」

 バタン、とドアが閉まる音が静かに鳴る。

 その音は、アリーシアにはやけに冷たく聞こえた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

一部のAndroid端末では
フォント設定が反映されません。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、気になる小説の更新を逃さずチェック!

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、お気に入り作者の活動を追いかけよう!