• 風を掬う者

  • 弐章
  • 英雄
  • 挿話参拾伍/万事休すからの起死回生

挿話参拾伍/万事休すからの起死回生

露衣土ろいどの部屋の前で燿炎ようえんは露衣土と対峙していた。


珍しく風も全く吹いていない。


風も二人の対決を固唾を呑んで、静かに見守っている。


正にそんな感じであった。


幾らか下の階からの喧々たる物音も届いてくるが、激しい戦闘が行われているであろう、下の階とは別世界の様である。


そんな中で先に動いたのは燿炎だった。


燿炎は自らの頭上に、とてつもなく大きな火球を作り、その火球を露衣土へ向けて放つ。


恐らく、これだけの火球を作り出せるのは、この星の中でも燿炎にしか出来ない事だろう。


それでも露衣土は微動だにせずに、そのまま火球に包まれる。


普通なら、これで露衣土の体は跡形も無く燃え尽くされて、勝負は決するはずであった。


しかし信じられない事にその火球の中から笑い声が響いてくる。


「ふはははは」


そして露衣土が声を張り上げる。


「これくらいの炎で私を倒せるものか!」


途端に露衣土を包んでいた火球が一気に消し飛んだ。


露衣土は先程と同じ状態で微動だにせずに立っている。


「くっ、」


燿炎は小さく呻いた。


燿炎には、もう、先程より強力な炎は作り出せない。


燿炎が作り出す事が出来る最大の炎が通用しなかったのだ。


万事休すである。


「どうやら、お前には私に倒される覚悟の方が必要だった様だな」


露衣土が勝ち誇った様に言った。


何も言い返せずに、ただ露衣土を睨みつける、燿炎。


そして露衣土は畳み掛ける様に言う。


炮炎ほうえんがあの世で寂しがっているぞ。これから炮炎と再会させてやろう」


露衣土のその言葉と共に燿炎は一瞬にして凍らされてしまった。


露衣土からすれば、後は大地の魔法で燿炎の体を粉々にするだけである。


そして露衣土は大地の魔法を使って、燿炎の体を粉々にしようとした。


しかし露衣土が大地の魔法を使っても、燿炎の体は粉々にならない。


周りを見渡すと、いつの間にか、燿炎のすぐ左後方に崩墟ほうきょ、上空に麗羅れいら、燿炎から少し離れた右後方に凍浬とうりと、討伐軍四天王の残りの三人が此処まで、やって来ていた。


そして凍っていた燿炎もすでに解凍されて、元の姿に戻っている。


麗羅が風の魔法で崩墟と凍浬を此処まで連れて来て、崩墟が大地の魔法で露衣土の大地の魔法を相殺し、凍浬が氷の魔法で凍っていた燿炎を解凍したのだ。


「助かったぜ」


解凍された燿炎が言った。


そして燿炎は再び先程と同じくらいの大きさの火球を自らの頭上に作り出して、それを露衣土に放つ。


露衣土もまた先程と同様に微動だにせず、火球に包まれた。


その瞬間、燿炎が叫ぶ。


「麗羅!」


「判ってるわよ!」


麗羅が応えた。


そして麗羅が風の魔法を使って風を操り、露衣土を包んでいる火球に大量の酸素を送り込む。


火球の炎が勢いを増す。


そんな火球の中で露衣土は燿炎に対して、優しい眼差しを向けながら声を掛けてくる。


「本当に強くなったものだ」


露衣土がそう言った途端に火球が一気に消し飛ぶ。


そして今度は火球と共に露衣土の肉体も跡形も無く消し飛んだ。


「露衣土ー!!」


燿炎の咆哮が露衣土城の上空に響き渡る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

一部のAndroid端末では
フォント設定が反映されません。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、気になる小説の更新を逃さずチェック!

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、お気に入り作者の活動を追いかけよう!