挿話参拾肆/理解を超えた対立

様々な経緯を経て結果的に、なのかもしれないが、燿炎ようえん露衣土ろいどに対する理解を深める事となった。


だから燿炎は憎しみを抱いていたはずの露衣土に対して、尊敬の念すら抱く様になってきている。


そして露衣土に対する尊敬の念があるからこそ、燿炎もまた真剣に平和へと向かわなければならない。


炮炎ほうえんも真剣に平和へと向かった過程で露衣土に殺されたのであって、露衣土もそんな炮炎だからこそ真剣に炮炎を殺したのであろう。


そして燿炎と露衣土はこれから雌雄を決しようとしている。


お互いがお互いの信ずるものの為に相手を倒さなければならない。


その結果、恐らくは、どちらかが死ぬ事になるであろう。


そして、どちらが死ぬ事になったとしても、どちらも恨んだり憎んだりするものではないのだ。


お互いが真剣に平和というものと向き合った結果、相手を殺さなければならなくなっただけの事である。


二人は数瞬の間、目を合わせたまま微動だにしなかった。


そして露衣土が先に燿炎に声を掛ける。


「久しぶりだな」


「そうだな。これだけの時間があれば、お前も十分に覚悟が出来ただろう?」


燿炎は露衣土の声に応えると共に露衣土の覚悟を問うた。


惚ける様な感じで燿炎に訊き返す、露衣土。


「私に一体、何の覚悟の必要があるんだ!?」


「別に惚ける必要は無いだろう」


少し呆れる様に燿炎は言った。


露衣土は微笑みながら言う。


「惚けてなんかは、いないさ。それが現実と云うものだろう」


「何が現実だよ。今のこの状況を理解出来ていないのか!?」


燿炎は不満そうに言ってはいるが、そんな言葉とは裏腹に燿炎もまた露衣土との会話を楽しんでいる様だ。


露衣土は燿炎の問いに対して、不遜に言い放つ。


「私はどの様な状況であれ、何も変わりはしない」


「そうだったな」


燿炎は露衣土の言葉に納得した。


今度は露衣土の方から燿炎に覚悟を問うてくる。


「覚悟が必要なのは、お前の方じゃないのか!?」


「覚悟なら、もう十分にしているさ」


今度は燿炎が微笑みながら言った。


露衣土は感心する様に言う。


「そうか。私に倒される為にわざわざ此処まで、やって来たという事か」


「誰がそういう覚悟をしたと言った?」


燿炎は露衣土の受け取り方に対する疑問を呈した。


正解がなんなのか、露衣土は燿炎に尋ねる。


「じゃあ、どんな覚悟をしたというんだ!?」


「お前を倒す、覚悟さ」


燿炎が露衣土に言い放った。


今度は露衣土が燿炎の言葉に納得して、更に言葉を続ける。


「なるほど。しかし、その覚悟は無駄だったな」


「やってみなければ分からないさ」


燿炎が楽しそうに言った。


露衣土も楽しそうに言い返す。


「お前には分からなくても私には分かる」


「まあ、いい。俺達の間に言葉はもう不要だ」


燿炎が会話を終えようとした。


露衣土が燿炎の言葉に同意する。


「そうだな」


二人は再び目を合わせたまま微動だにしなくなった。


下階では城兵と討伐軍との激しい戦闘が続いている。


しかし此処はまるで、時が止まってしまったかの様であった。

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