挿話参拾/定まった標的

燿炎ようえん達、露衣土ろいど討伐軍は本隊をしゅうの国で展開した。


そして、それとは別に少数精鋭の別働隊を組んで、こちらのれいの谷を進み、露衣土城のみを攻略するべく、露衣土城へと向かっている。


一方、露衣土軍の本隊は洲の国との国境を挟んで、しょうの国で部隊を展開し、討伐軍本隊と睨み合いを続けていた。


─────


少し話を戻して、三日前の討伐軍による作戦会議での事である。


燿炎が本隊を洲の国で展開したまま少数の別働隊で、露衣土城のみを攻め落とす作戦を提案した。


幹部達の多くは、その様な燿炎の提案に対して、戸惑いを隠せないでいる。


「少数部隊だけで露衣土城を攻め落とせるのだろうか」


「いや、その前に露衣土城に辿り着く事さえ難しいだろう」


「果たして今の状況でわざわざ、その様なリスクを冒さなければならないのだろうか」


「別働隊などは組まずに戦力を集中して進軍していった方が、確実に露衣土城を攻め落とす事が出来るのではなかろうか」


この様な否定的な意見が会議場を飛び交っていた。


そんな中で凍浬とうりが燿炎に声を掛ける。


「やっと本気になったんだな」


そして燿炎は会議場に居た幹部達に力強く語り掛ける。


「澪の谷を通って行けば露衣土城に辿り着く事はそう難しい事ではない。しかし少数部隊で露衣土城を攻め落とす事はそう容易くもない。それでも我々はそれを、やり遂げねばならない。何としても、だ」


そして戸惑う幹部達に、これまで見せた事のない程の強い決意を込めた表情を見せた。


そんな燿炎の表情を見て、それまで戸惑っていた幹部達も氷の大陸出身で地理を熟知している燿炎の提案に納得して、また、それまで抱いていた不安も払拭され、全会一致で燿炎の提案した作戦を決行する事になったのである。


─────


その様な経緯を経て、少数精鋭の別働隊で露衣土城を急襲する事にした討伐軍であった。


その別働隊にはリーダーである燿炎を含めて、麗羅れいら、凍浬、崩墟ほうきょの四天王が揃って組み込まれている。


本隊の方は露衣土軍と睨み合いをするだけだからだ。


戦況から考えて、露衣土軍の方から攻めて来る事は先ず、有り得なかった。


万が一に露衣土軍の方から攻めて来られたとしても、討伐軍が数の力で負ける事は考え難い。


寧ろ、そうして貰った方が討伐軍の思う壺であった。


悪戯に戦場を拡大せずに露衣土軍の戦力を削る事が出来る。


そう考えると露衣土軍の方から動いてくる事は有り得ないのだ。


今や、形勢は圧倒的に討伐軍の方に傾いているのである。


だから別働隊を組まずに本隊のまま進軍して行って、露衣土城を攻め落とす事も選択肢の一つではあった。


寧ろ露衣土城を攻め落とすには、そちらの方が確実であったと思われる。


しかし、それでは露衣土帝国がやってきた事となんら変わりがなくなってしまう。


そして双方の軍、更に民間人も含めて、悪戯に犠牲者を増やすだけなのだ。


それを避ける為に少数精鋭の別働隊を組んで、露衣土城のみを攻め落とそうとしていた。


そして燿炎達、別働隊の一行はこの澪の谷を露衣土城へと向かって進んでいる。


澪の谷の底には氷河が流れていた。


討伐軍はその氷河の上を進んでいる。


両脇は切り立った崖である。


この様な所で大部隊を展開する事は出来ない。


別働隊も縦長になって進軍するだけである。


もし此処で露衣土軍が仕掛けて来るのであれば、崖の上からの攻撃しか考えられなかった。

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