挿話弐拾参/向きが替わった風

氷の大陸、元、じょうの国のほぼ中心にある露衣土ろいど城。


燿炎ようえん達、反乱軍掃討の報告後、露衣土は各地に残存する抵抗勢力への威力制圧に、更なる力を注いでいた。


毎日、毎日、報告を受けて、必要があれば自ら直接の指示も出す。


しかし八ヶ月を経た現在も未だ、精霊の星、全体を制圧するまでには至っていない。


それどころか力で捩じ伏せようとすればする程に、抵抗勢力が後から後から湧き出て来る様に感じている。


決して敗戦の報に触れる訳ではないが、いつまで経っても抵抗勢力が居なくならなかった。


まるで土竜叩きの様である。


こっちを叩けば、あっちに、あっちを叩けば、こっちに。


とにもかくにもキリがなかった。


そんな折りに驚くべき報告が舞い込んでくる。


『大地の大陸が復活』


この報告が本当であれば、大変に驚くべき事だが、俄には信じ難い事ではある。


だから露衣土はまともには受け取らなかった。


しかし次に齎された報告が問題だったのである。


数ヶ月後、更に驚くべき報告が舞い込んで来たのだ。


『燿炎達、反乱軍が大地の大陸に新たな国家を建てた』


こちらの報告は露衣土からすると、驚くというよりも呆れる外はなかった。


部下の報告に拠れば、以前に燿炎達は死んだはずなのである。


その死んだはずの燿炎達が大地の大陸を復活させて、大地の大陸に新たな国家を建てたのだ。


はっきり言って、部下の怠慢以外の何物でもなかった。


しかし今更、部下をそんな事で責めても、どうにもなるもんでもない。


寧ろ部下の報告を鵜呑みにした自分自身が腹立たしいくらいであった。


いずれにしても、こうなると、もう、噂などというレベルの話ではなくなってくる。


後からの報告が前の報告の裏付けにもなってくる訳で、信じ難いなどと言っている場合ではないのだ。


現実のものとして考えなければならなくなってくる。


抵抗勢力の勢いが衰えない原因も、恐らくはにあるのだろう。


実際に大地の大陸に出来た新たな国家の存在が、炎の大陸と風の大陸に展開していた抵抗勢力に勇気と安心を与えていた。


例えその時の戦闘に敗れても、大地の大陸に逃げ込む事が出来たからである。


更には炎の大陸と風の大陸では、民衆が次々と抵抗勢力になったりもしていた。


その様な事が延々と繰り返されていたのだ。


露衣土は思った。


風はもう自分には吹いていない、と。


しかし不思議と悔しさは無かった。


寧ろ燿炎が生きていた事が嬉しく感じたりもする。


若かりし頃に語り合った、短くも濃厚な時間。


あの頃の続きを、まだ続ける事が出来る。


当時、語り合った相手は主に炮炎ほうえんであった。


そして今、更にこれから戦わなければならない相手は燿炎に替わっている。


若かりし頃の燿炎は露衣土に追従していた。


そして共に幾多の戦いを潜り抜けて来たのである。


その燿炎と戦わなければならなくなった。


それでも此処まで来た以上は、今更、後に引く訳にもいかない。


「燿炎よ。見事、私を倒してみせよ」


露衣土は覚悟を決めたかの様に一人呟いた。

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