挿話拾陸/最後の欠片

燿炎ようえん達は万象ばんしょうに連れられて、村の広場へやって来る。


広場の中心には焚火があって、その周囲を反乱軍の仲間達が囲んでいた。


しかし数名の者達の顔が見られない。


燿炎は麗羅れいらに尋ねる。


「他の者達は?」


麗羅は無言で首を横に振った。


「そうか、」


燿炎は少し落胆したが、落胆ばかりもしていられないので、すぐに気を取り戻した。


そこへ万象が寄って来て燿炎に問う。


「犠牲者が出たのはお気の毒じゃが、主等には、やるべき事があるじゃろう?」


燿炎は何も言わずに強い表情で応えた。


更に万象は続けて燿炎に問う。


「そこで主等に会わせたい者がおるのじゃが、会ってみるか?」


「どの様な者なのでしょうか?」


燿炎は万象に訊き返した。


万象は燿炎の問いには構わずに、別の質問を燿炎に向ける。


「主等は露衣土ろいどが大地の精霊の守護を受けている事を承知しておるのか?」


「いえ。俺は露衣土とは幼い頃からの付き合いで、よく知っているが、そんな話は聞いた事もありません」


燿炎はまだ万象の言った事が信じられない様な感じで応えた。


それを予測していた様に語る、万象。


「やはりな。まあ、自分が何の精霊の守護を受けているかなんて、わざわざ他人に話したりはせんだろうから、意図的に隠していたのかは判らんが、それは紛れも無い事実ではある」


「そうですか。俺はてっきり、露衣土は氷の精霊の守護を受けているもんだと思っていました」


燿炎は己の思い込みを恥じる様に言った。


それを聞いた万象は更に驚く話をする。


「露衣土は氷の精霊の守護も受けておるよ。ごく稀だが、同時に複数の精霊の守護を受ける者もおる。露衣土はそんな一人である」


「では、ひょっとしたら、氷の魔法で相手を凍らせて、その凍らせた相手を砕いていたのは大地の魔法だったりするのでしょうか?」


燿炎は万象の話から生じた疑問を投げ掛けた。


投げ掛けられた疑問を肯定して、更に続ける、万象。


「恐らく、というよりは間違いなく、そうであろう。凍らせたものを氷の魔法で砕く事は出来ん」


「なるほど。そうだったんですか」


燿炎は納得した。


そして万象が話を元に戻す。


「そこで、じゃ。主等には足りない部分を補う者が必要なんじゃないかと思っておるのじゃが」


「その様な者がおられるのでしょうか?」


燿炎は万象に尋ねた。


万象は再び燿炎に問い掛ける。


「だから会ってみる気はないか?」


燿炎は少し戸惑ったが、すぐに返事をする。


「是非、会わせて下さい」


「ちょいと、崩墟ほうきょを呼んで来ておくれ」


万象は声を大きくして、少し離れた所に居た男に指示した。


暫くすると、とても大きな男がやって来る。


燿炎の体もかなり大きい方だったが、崩墟という男の体は燿炎よりも、更に二回り程、大きかった。


皆が崩墟の大きさに驚いてる中、万象が話し始める。


「これが崩墟じゃ。この男、大地の精霊の守護を受けている。言葉を発する事は出来ないが、言葉を解する事は出来る。中々、役に立つ男じゃが、どうじゃ?主等と共に連れて行っては貰えまいか?」


そう言われて燿炎は直接、崩墟に訊く。


「俺達の方から是非にと、お願いしたいくらいだが、本人はどう思っているのか。俺達はいつ死ぬやもしれぬ戦いの中に居る。それでも構わないのか?」


崩墟は無言で頷いた。


「この男もまた主等と共に露衣土を倒す定めにあるのじゃよ」


万象はこの出会いが避けられぬ運命であるかの様に言った。

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