• 風を掬う者

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  • 挿話拾伍/偶然の出会い、必然の導き

挿話拾伍/偶然の出会い、必然の導き

燿炎ようえん、まだ、判らないのか?」


炮炎ほうえんが厳しい眼差しで燿炎に問うた。


「炮炎」


燿炎は炮炎の問いには答えられずに、それだけを言うのが、やっとだった。


そんな燿炎の様子を見て説得を続ける、炮炎。


露衣土ろいどのやらんとしている事が真の平和に繋がるものではない事を」


「んー」


燿炎は言葉にならない呻き声を発するだけだった。


突然、話に割って入ってくる、露衣土。


「言いたい事は言い終わった様だな」


「止めろ!露衣土!」


燿炎は露衣土を制止しようと叫ぶ。


─────


自らの叫び声と共に目を覚ます、燿炎。


これまでに何度となく見ている夢であった。


そして過去に現実として起こった事でもある。


すると何処かからか、笑い声が聞こえてきた。


周りを見渡すと、麗羅れいら凍浬とうりがこちらを見て笑っている。


そして麗羅が笑いながら燿炎に言う。


「こんな状況になってまで何も変わらないのね」


「そう言う麗羅も相変わらずだな」


凍浬は麗羅へ皮肉を言って微笑んだ。


すぐさま麗羅が凍浬に言い返す。


「うるさいわね。あんたも相変わらずに嫌な奴ね」


麗羅は少し臍を曲げた様だった。


凍浬は苦笑する。


そんな二人の様子を見て、燿炎は少しホッとした。


そこへ一人、年配の男がやって来て、燿炎に声を掛ける。


「やっと気が付かれましたか」


「貴方は?」


燿炎はその人物が誰なのか判らずに訝しげに尋ねた。


年配の男は燿炎の問いに応える様に自らの名を明かす。


万象ばんしょうと申します」


「万象が私達を助けてくれたのよ」


麗羅が口を挟んできた。


燿炎は麗羅の言葉を聞いて、万象に礼を述べる。


「そうでしたか。それは、どうもありがとうございました」


「いやいや、いいんじゃよ。たまたま通り掛かったついでに助けたまでじゃ」


万象は謙遜する様にそう応えた。


そして燿炎は思い起こす様に言う。


「そう言えば、俺達は、」


「そうよ。露衣土軍に襲われたみたい」


麗羅がすぐさま応えた。


燿炎は思い出した様に言う。


「そうだ。俺達は地割れに飲み込まれたんだ」


「ふふふ」


麗羅はそんな燿炎を見て微笑んだ。


燿炎は状況を把握した事で、万象に対する関心が強まって、再び万象に尋ねる。


「しかし、あの様な状況で俺達を助ける事が出来るなんて。それに、あの様な場所を通り掛かる事も普通じゃ考えられない。貴方は一体?」


「まぁ、気になさるな。それも定めじゃ」


万象は事も無げに、そう応えた。


燿炎は納得がいかなかったが、命の恩人にこれ以上、同じ事を尋ねるのは失礼だと思って話題を変える。


「では、此処は何処でしょうか?」


「わしと仲間が暮らす村じゃよ」


万象はすぐに応えた。


燿炎は考える様に少し黙り込む。


すると万象が燿炎達に声を掛ける。


「皆さん、気が付かれた様なので、こちらに来なさいな」


そう促されても、燿炎はまだ考え込んでいる。


そして独り言の様に呟く。


「万象。何処かで聞いた名だな」


燿炎は万象と云う名に聞き覚えがある様であった。


麗羅が燿炎を急かす。


「そんな事いいから、早く行きましょう」


燿炎は苦笑しながら麗羅達と共に万象に着いて行く。

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