挿話拾肆/彷徨う反乱軍
炎の大陸、元、
燿炎は露衣土が大地の精霊の守護も受けている事を知っていた訳ではなかったが、露衣土が大地の精霊の守護を受けた者達を受け入れていた事は周知の事実として知ってはいた。
だから今後、露衣土軍との戦いを進めていく上で、どうしても大地の精霊の守護を受けた者達を反乱軍の戦力として加えておきたかったのである。
その様な理由で、今、反乱軍は深い森の中を苦しみながら進んでいた。
燿炎達、反乱軍の者達は誰一人として口を開かない。
かなり疲労の色が濃い様だ。
それでも前に進んで行く外はない。
暫く森の中を進んでいると、一面拓けた場所に辿り着く。
しかし拓けているだけで、他に何がある訳でも無かった。
そして、その周囲もまた森に覆われている。
「なんなんだ?此処は?」
反乱軍の中の誰かが口を開いた。
「なんにしろ、警戒はしておけよ」
燿炎が皆に注意を呼び掛ける。
周囲を森に囲まれている場所で、この場所は少し異様にも感じられた。
人々が暮らしていた形跡でもあれば何も異様な事はないのだが、形跡も何も無いのである。
人間が森の中に集落を作る場合、主に二通りの方法が考えられた。
一つは元々拓かれた場所に集落を作る。
もう一つは人間が森を切り拓いて、そこに集落を作る。
いずれにしろ、この様に拓かれた場所は人間が集落を作るのに持ってこいであるが故に、人々の生活の痕跡が無い事が不自然にも感じられたのだ。
だからと言って、このまま足踏みしていても、どうにもなるものでもないので、反乱軍は警戒を強めて歩を進めて行った。
拓けた場所の中腹辺りに差しかかると、突然に地割れが起きて、反乱軍の殆どが飲み込まれてしまう。
反乱軍の中でも風の精霊の守護を受けた者達だけは、自ら風の魔法を行使して、空中に飛んで難を逃れた。
しかし風の精霊の守護を受けた者達の中でも
麗羅は事、魔法において、攻撃をする事が苦手だったが、攻撃を受ける事も苦手だったのである。
サポート魔法に限っての事だが、準備する時間を十分に与えれば、麗羅以外には誰にも出来ない様な魔法を使う事も出来たが、咄嗟の判断で魔法を使う事が苦手でもあった。
そして難を逃れたかに見えた、麗羅以外の風の精霊の守護を受けた者達に向かって、周囲の森の中から多数の炎と氷の矢が襲い掛かる。
どうやら敵の襲撃を受けた様であった。
恐らくは先程の地割れも大地の魔法に拠るものであろう。
空中に飛んだ風の精霊の守護を受けた反乱軍の者達は次々と倒されていく。
そこに一人の男が現れる。
そのまま地割れした地面の淵に立って、地割れした中の方を覗き込んだ。
「この程度なのか、反乱軍は」
物足りなさそうに男が呟いた。
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