挿話陸/氷の皇帝

露衣土ろいど


氷の大陸にあったじょうの国で生まれて、幼少の頃から、よく炮炎ほうえん燿炎ようえんと行動を共にしていた。


露衣土が成人した事を切っ掛けにして、露衣土と燿炎は力ずくで浄の国の政権を奪い取る為の戦争を始める。


この頃に炮炎は露衣土とは意見を違えて、二人の下を去る事になった。


そして露衣土は浄の国の政権を奪うと、浄の国を露衣土帝国として自らが皇帝に就くやいなや、国家の対立が争いの根源と断定して、約三十年にも渡る統一戦争を繰り広げる事となる。


そして精霊の星にあった全ての国家を手中に収めて、精霊の星を露衣土帝国という一つの国家の下に纏め上げる事になった。


それにより一時的にではあるが、国家間に拠る大規模な紛争が起こる事は無くなって、露衣土は精霊の星の英雄として絶大な支持を得る事になる。


しかし全ての国家を手中に収めたとは言っても、各国家内に散らばる反抗勢力までは制圧するに至らずに、統一戦争終結後、力に依る反抗勢力の掃討を行っていく。


それにより露衣土のやり方に疑問を抱かずにはいられない者も増え始めて、再び各地で紛争が拡がりつつあった。


そんな中で、とある事件が起こってしまう。


その事件を切っ掛けにして、燿炎もまた露衣土の下を去る事になったのである。


そして精霊の星の民衆の間では、露衣土に代わる新たな英雄を待ち望む声も拡がってきていた。


因みに露衣土は世間一般的に『氷の皇帝』と称されていて、氷の精霊の守護を受けていると認識されているが、実は氷の精霊の守護と同時に大地の精霊の守護も受けている。


露衣土にとっては、それが大地の精霊の守護を受けた者を受け入れ続ける最大の理由であったのだが、それらの事は露衣土以外の者には知る由すらなかった。


炮炎や燿炎ですら、その事は知らされていなかったのである。


それというのも、わざわざ自分が何の精霊の守護を受けているのかを他者に明らかにする習慣が無かった。


他者からすれば行使する魔法に拠って、誰が何の精霊の守護を受けているのかを判別する事も出来たからだ。


しかし露衣土は大地の魔法を氷の魔法で凍らせた相手を砕く時にだけ使用していたので、周囲の者が気付かなかっただけである。


周囲の者は氷の魔法で砕いていると思い込んでいた。


実際には如何に露衣土であろうとも、凍らせた相手を氷の魔法で砕く事は出来ない。


そして露衣土も決して、その事を隠していた訳ではなく、露衣土の方は露衣土の方で、すでに周囲には知られているものだと思い込んでいた。


また露衣土はもっと様々な大地の魔法を使おうと思えば使う事は出来たのかもしれないが、凍らせた相手を砕く魔法さえ使う事が出来れば、それ以外の大地の魔法は使う必要が無かったのである。


地震や地割れを起こす様な魔法を使わなくても、氷の魔法で十分に相手を制圧が出来た。


わざわざ周囲にまで被害を出す様な魔法は使う必要が無かったのである。


それが結果的に、露衣土が大地の精霊の守護も受けていると云う事実を隠してしまったのかもしれなかった。

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