挿話弐/四つの精霊

精霊の星。


この星は四つの精霊の守護に拠って、成り立っていた。


炎の精霊、氷の精霊、風の精霊、そして、もう一つは大地の精霊である。


しかし大地の精霊に関しては、その存在そのものを信じていない地域も少なくはなかった。


それがこの星では大きな問題になっていたのである。


特に風の大陸においては、全土で大地の精霊の存在が否定的に考えられていた。


その理由の一つは大地の大陸が存在しないからである。


伝説としてのみ南半球の海の底に大地の大陸が存在すると云う様な。


そして、この精霊の星に生まれる人間は全て、四つの精霊の内、いずれかの精霊の守護を受ける事になる。


出生率に関しては、炎の精霊の守護を受ける者が四割を超える程度、氷の精霊の守護を受ける者が三割を超える程度、風の精霊の守護を受ける者が二割を超える程度、大地の精霊の守護を受ける者は一割にも満たない。


どの精霊の守護を受けるのか、親と子との間に一切の因果関係は無く、子供が生まれた瞬間に精霊の気紛れで決定される。


更に極稀ではあるが、同時に複数の精霊の守護を受ける者も居る様であった。


そして、この星の者は皆、守護を受けた精霊の力を借りて、それぞれ独自の魔法を行使出来る様になる。


その魔法はイメージするだけのもので、イメージして出来るものは出来て、出来ないものは出来ない、と個人差も大きかった。


─────


例えば、炎の魔法は火を操って何かを燃やしたりするので、薪を燃やすくらいの事は誰にでも出来たが、才能のある者は森林を燃やしたりする事も出来た。


氷の魔法は水を操って何かを凍らせたりするので、器に入った水を凍らせるくらいの事は誰にでも出来たが、才能のある者は大海を凍らせたりする事も出来た。


風の魔法は風を操って何かを動かしたりするので、情報の移動(テレパシー)くらいの事は誰にでも出来たが、才能のある者は物質の移動(テレポート)も出来た。


大地の魔法は土を操って何かを作り出したりするので、泥団子を作るくらいの事は誰にでも出来たが、才能のある者は建造物を作る事も出来た。


─────


また大地の精霊に関しては、前述でも述べた通り、その存在そのものを信じていない地域があって、炎、氷、風、いずれかの魔法が使えない者を『悪魔の子』と称して迫害をしたり、もっと酷くなると処刑の対象としている地域もあった。


それというのも、大地の魔法は地震や地割れを起こすものもあったので、周囲の人々にとっては、それが単なる自然災害なのか大地の魔法に因るものなのかの判別が出来なかったのである。


そして大地の精霊の守護を受けた者が居る所では、結果的に地震や地割れなどの自然災害に見舞われる機会が増えてしまう。


その事で大地の精霊の守護を受けた者は、大地の精霊の存在を信じていない地域において、災害を招く『悪魔の子』になってしまうのである。


また大地の精霊の存在が信じられている地域であっても、前述の様な理由から差別的な扱いを受ける事も少なくなかった。


人々とは勝手なもので、理屈として大地の精霊の存在を信じてはいても、いざ現実に自らが大地の精霊の守護を受けた者と接する事には抵抗を感じたりもする。


社会の中では、その様な事が差別に対する制度の整備を進めていく上での大きな障害にもなっていた。


結局、精霊の星の中で、大地の精霊の守護を受けた者の居場所は、かなり限定されてしまっていたのである。


そんな中で露衣土ろいどは大地の精霊の守護を受けた者を受け入れ続けてもいた。


その様な事から、露衣土は大地の精霊の守護を受けた者の受け皿として、大衆からの絶大な支持を得る事にもなったのである。

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