挿話弐拾/相変わらずな男

「土産だぜ」


天竜てんりゅうは部屋に入って来るなり、そう言いながら近藤こんどうに向かって、酒徳利を一つ放り投げた。


そして続け様に言う。


「そろそろ無くなる頃だろうと思ってよ」


天竜はまだ他にも酒徳利を三つ程持っていて、その一つを徳利のまま口に運んだ。


近藤が天竜に嫌味っぽく言う。


「珍しく気が利くじゃねぇかよ」


「珍しいってのは余計なんじゃねぇのかい」


そう言いながら天竜は左前方に近藤を、右前方に土方ひじかたを向かえる形で胡座をかいて座った。


近藤が早速、天竜に解決を求める。


「いきなりなんだがよぅ。なんとかなんねぇか!?」


「例の件か、」


天竜はすでに承知している様であった。


短く肯定する、近藤。


「ああ、」


「その件は虎三郎こさぶろうに任せてあるぜ」


天竜は対応済みである事を伝えた。


話に割って入ってくる、土方。


「虎三郎で大丈夫なのか!?」


「恐らくは、無理だろうな」


天竜は自身の否定的な見解を述べた。


土方は天竜に率直な疑問をぶつける。


「なに!?じゃあ、虎三郎を見殺しにする気なのか?」


「そうなるかも、しれねぇな」


天竜は土方の疑問をそのまま受け止めた。


近藤は二人のやり取りをじっと見ている。


土方は何も言えなくなってしまう。


痺れを切らすように天竜が話し始める。


「いや、よぅ、奴を俺が斬る訳には、いかねぇんじゃないかと思ってんだけどよ」


虎次郎こじろうの敵だからか!?」


土方が天竜に確認する様に訊いた。


天竜は自分が思っている事を率直に述べる。


「それもあるけどよぅ、自分とこの隊長さんまで、やられてんだろ」


斉藤さいとうか、」


土方が呟いた。


続けて自身の憶測を述べる、天竜。


「更には源太郎げんたろうの奴も恐らく、」


「それは本当なのか!?」


再び土方が天竜に確認を求めた。


天竜は自身の憶測に自信あり気である。


「源太郎を斬れる奴なんか、そうそうは居ねぇだろうからな」


「それもそうだな」


土方は天竜の憶測に納得した様だ。


念を押す様に言う、天竜。


「可能性は高いと思うぜ」


「で、よう、さっきと言ったけどよぅ、少しでも勝算があっての事なのか!?」


今度は近藤が天竜に訊いてきた。


天竜は近藤の問いに淡々と答えていく。


「勝算と言えるかどうかは分からねぇが、隠岐おき流には必殺剣があると聞く」


「私も聞いた事があるな」


土方が天竜に同調した。


話を続ける、天竜。


「だから、ひょっとしたら、とは思うんだけどな」


「なるほどな」


そう言いながら近藤が杯を口に運んだ。


そして天竜は自分が思っている事を率直に述べる。


「とにかくよぅ、先ず虎三郎にやらせねぇと、俺が動く訳には、いかねぇと思ってよ」


「よし、解った。その件は取り敢えず、虎三郎に任せるしかねぇな」


近藤は十分に納得が出来た様だった。


土方も納得が出来た様である。


「その様ですね」


「で、はじめの後釜は決まったのかい?」


天竜がどちらともなく訊いた。


近藤が天竜に訊き返す。


「ああ、それも虎三郎でいいかと思っているんだが、どうだ!?」


「いいんじゃねぇの、虎三郎で」


天竜はすぐさま応じた。


土方が口を挟む。


「しかし、」


「なんだ!?とし、」


近藤が土方に声を掛けた。


自身の見解を述べる、土方。


「いや、天竜の話を聞く限りじゃ、虎三郎もこれから、どうなるか分からないじゃないですか」


「ああ、そりゃあ、そうなった時にまた考りゃいい」


近藤がきっぱりと言い切った。


不敵な笑みを浮かべながら、天竜が言い放つ。


「そうだぜ。それにお前等も、いずれは俺に斬られるんだからな」

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