11-9


 結論から言ってしまおう。


「やっ、た? やった……、やったー!」


 マジカルイエロー、黄村きむらひかりは無事である。

 あのように、元気に自分の勝利を喜んでいる姿を見れば、一目瞭然だ。


「あ、危ねぇ……」


 そして、そんなイエローの様子を眺めつつ、俺はキリキリと痛む頭を抱えながら、絞り出すように一息吐くのが、やっとだった。


『バ……、バカな!』


 松戸まつど博士が漏らした驚愕の声と共に、胴体にぽっかりと大きな穴が空いた剛骸ごうがいが、重苦しい轟音を響かせながら、その巨体をゆっくりと崩し、地面に倒れ伏す。



 勝負は、当然だが、一瞬でついた。


 俺が死ぬ気で、文字通り死ぬ気で用意した数多の魔方陣は、どうやら、きちんと効果を発揮してくれたようだ。


 イエローの姿が掻き消えた次の刹那、剛骸はこれまでの健在ぶりが嘘のようにズタボロとなり、その直線状、まさに相手を突き抜けて着地したイエローの方には、怪我ひとつした様子はない。


 とりあえず、イエローが五体満足なようで、俺は、ほっと胸を撫で下ろす。


「イエロー! 大丈夫? どこも怪我してない?」

「あっ、みんな! ねぇ、見た見た? イエローの大活躍!」


 心配そうに駆け寄ってくる他のマジカルセイヴァーを、ぴょんぴょん飛び跳ねながら興奮した様子で出迎えるイエロー……、あの感じなら、内臓へのダメージを心配する必要もないだろう。


「へっへーん! イエローが本気になったら、楽勝! 楽勝!」


 楽勝じゃねぇよ!

 お前を助けようと、俺は必死も必死だったよ!

 本当に脳細胞の何割かは、死滅したよ!


 なんて叫びたかったが、今の俺は呼吸を整えるので、精一杯だった。


 どっちみち、今の俺はシュバルカイザーなのだから、そんな普段の俺丸出しな声を上げたとしても、カイザースーツが全てカットしてしまうのだけども。


 まぁ、イエローが……、ひかりが無事でホッとしたから、こんなことを考える余裕も出てきたのだと思えば、それほど悪い気はしなかった。


『ヌ、ヌハ、ヌハ、ヌハハ! まぁいい! これはあくまで前哨戦! 次が! 次こそが最後の……!』


 松戸博士が、なにやら捨て台詞を言い切る前に、剛骸の方は、とうとう完全に壊れてしまったようだ。一瞬、激しく火花が散ったかと思えば、大きな音を立てて、派手に爆発してしまう。


 次こそが最後……、とかなんとか聞こえた気がするが、ちゃんと聞いてなかったので、よく分からない。どうせなら、これで最後にしてほしいのだが。


 なんにせよ、この場の危機は去ったのだから、良しとすることにしよう。


「よーし! この調子なら、あの生意気なシュバルカイザーだって楽勝で!」

「……アホか」


 完全に調子に乗ったマジカルイエローが、本当にノリだけで、今度は俺に向かって光速で突撃しようとしているのが丸わかりだったので、手早く展開した魔方陣を使うことで、あらかじめ拘束してしまう。


「うきゅ!」


 どうやら、もうかなり復調できたようで、俺の魔方陣はスムーズに展開し、見事にその効果を発揮すると、対象の身体を捕縛した。


 イエローが、なんだか可愛らしい悲鳴を上げて、無様に地面に転がってしまったが、まぁ、これくらいは許して欲しい……、というよりは、少しは反省して欲しい。


「愚かなり、マジカルイエロー! 自らの奥の手を、利用されたとも知らずに!」

「なっ、なんですってー!」


 河原の地面をゴロゴロと転がりながら、イエローがなんだか良いリアクションを返してくれる。くそう、なんだか可愛いな。


「貴様が剛骸を倒せたのも! そして、まだそうして生きているのも! すべては我が気まぐれよ! ハーッハッハッハ!」


 本当は全然、まったく、これっぽっちも、笑う余裕なんてなかったのだが、俺はそれでも悪の総統らしく、余裕綽々の態度で、高笑いを決めてみせる。


 本当は必死だったなんて、絶対に悟られないように。


「そ、そんなのウソよ! ハッタリよ! このヘッポコ悪人! ダメ人間! 適当なことばっかり言ってると、許さないんだからね!」


 自らの成功にケチをつけられた気分なのか、イエローが、より激しく地面を転げまわりながら抗議の声を上げている。他のマジカルセイヴァーは俺への警戒を緩めていないので、なんだか凄まじくシュールな光景だった。


「……いいえ、イエロー、あれはウソでも、ハッタリでもないわ」

「ピ、ピンク……、でも……」


 悪の総統シュバルカイザーへの警戒は強めたままで、リーダーであるマジカルピンクがイエローを諭すため、本当のことを教えてやっている。


 どうやら、ピンクには全て分かっているようだし、イエローもピンクの言うことなら、無下にはできまい。


 よし、これはチャンスかもしれない。


「どうやら、流石にリーダーというだけあって、貴様には見えていたようだな!」

「…………」

「ど、どういうこと?」


 俺の嘲笑を受けて、ピンクは鋭くこちらを睨んだまま黙り込む。不安を隠せないイエローが、ピンクの足元で、すがるように、その身をよじった。


 すでに戦いの終わった戦場に、微妙な沈黙が訪れる。


『やっほー、総統! そっちはもう終わったかー?』

「……こっちは、もう大丈夫だけど、レオリアの方は?」


 絶妙なタイミングで入ってきたレオリアからの通信に、俺は素早く応答する。


 カイザースーツが柔軟に俺の意図を汲み取り、この通信を外部に漏れないように設定したため、この会話は、マジカルセイヴァーに聞かれる心配はない。


『オレは、もう全部倒しちゃったから、ちょっと周囲の様子でも探ってから、本部に戻ろうかなって』


 レオリアの方には剛骸の他に、無数の再羅もいたはずなのだが、どうやら向こうの戦闘も、すでに終了しているようだ。まぁ、レオリアなら当然か。


「分かった。それじゃ、俺はすぐ戻るよ」

『りょうかーい。それじゃ、本部でなー』


 監視者サーヴィランスシステムを通して、可愛らしいレオリアの投げキッス姿を確認した俺は、通信を切ると、再び目の前の状況に向かい合う。


 レオリアの方の戦闘も、無事に終わったようで何よりだが、今回の戦闘は、陽動の可能性が高いと自分で考えていた以上、俺はさっさと、本部に戻るべきだろう。


 本当ならもう少し、イエローに対して、もっと自分の命を大切にしろと説教してやりたいところだが、すでに結果だけ見たなら、悪の総統が正義の味方を助けたという状況になってしまっている以上、あまり突っ込んだ話もできない。


「ちょっと! あんたが一体、なにしたって言うのよ!」

「……シュバルカイザーは、魔術を使ったの」


 イエローは、自分になにが起きたのか、まったく理解できていないようだが、ピンクの目には、全てがいたらしい。


 まず基本的なことだが、そもそも魔素エーテルに干渉する才能を持たない者は、魔素を認識することすら不可能だ。魔術により行使された結果の方なら、知覚することは可能なのだが、どうやら、魔素そのもので描かれる魔方陣を、イエローは見ることができなかったらしい。


 まぁ、そもそも光速で動いている間のマジカルイエローが、どれだけ周囲を認識できるのか、俺には分からないのだけれども、どっちにしてもマジカルピンクが、きちんとなにが起きたのか、理解しているようなので、ありがたい。


 ピンクには悪いが、イエローへの詳しい説明は、全部丸投げしてしまおう。


「フッ、敵の気まぐれで命を拾っても、それが理解できなければ、気楽なものか! ハハハハハ! 余程リーダーの教育が、行き届いていると見える!」


 なんだか、かなり皮肉っぽくなってしまったが、今の俺は悪の総統ってことで、許して欲しい。なぜイエローを助けたかとか聞かれれてしまうと、色々と面倒なので、勢いで押し切ってしまいたい、というのもあるけど。


「くっ……!」

「ちょっと! なんだか分かんないけど、ピンクのこと馬鹿にしたら、イエローが許さないわよ!」


 言葉に詰まってしまったピンクを、地面に転がったままのイエローが庇うが、なんだか分からないけどじゃねぇよ、全部お前の話だよ。というか、お前のせいだよ。


 もう少し、真剣に反省して頂きたい。


「ハハハ! 悔しければ、次に会う時には、もう少し、自らの身の丈というものをわきまえておくのだな!」


 いや、もう本当に頼みます。

 こんなにハラハラするのは、正直、二度とごめんだ。

 

「では、さらばだ、マジカルセイヴァー! 拾った命、無駄にするなよ! ハハハハハハハハ!」

「待てー! 言いたい放題言って、逃げるなー!」


 最後まで生意気な口を閉じないイエローは無視して、俺はワープ機能を作動させ、一瞬で本部へと帰還する。


「シュバルカイザー、あなたは……」 


 マジカルピンクが、なにやら意味深な視線を俺に向けているが、既にワープが始まってしまった以上、構っている暇すらない。


 去り際の俺にできるのは、この後ピンクがイエローに説教でもなんでもして、ちゃんと命の大切さを教え込んでくれることを、祈るくらいだった。




「さて、無事に到着っと……」


 そして、その一瞬後には、俺はもうすでに、地下本部のワープルームへと帰投していた。相変わらず素晴らしい機能である。これが世間に普及したらなら、これまでの日常は、劇的に変化することだろう。


「……なんか変だな」


 なんて、ワープが生み出す商業的利益について、深く考察しそうになった俺だが、それよりも早く、周囲の異常に気付くことができた。


「静かすぎる……?」


 ワープして本部に帰還した際は、いつもこの場所に転送されることになっているのだが、普段なら辺りにいるはずの、ワープの管理を担当している戦闘員の姿が、見当たらない。


 いや、この場所だけではない。

 どうもこの地下本部全体の雰囲気が、いつもと違う気がする。


「……うーん」


 俺はカイザースーツの機能を使って、周囲の様子を探ってみることにする。


 レオリアは、まだ帰ってきていない。向こうで探索を続けているようだ。


 そして、いつもより地下本部にいる戦闘員の数が、明らかに少ない。警備をしている戦闘員の数こそ、いつもと変わらないが、それ以外のデスクワークを担当している戦闘員や、休憩中の戦闘員、トレーニング中の戦闘員などの姿が、殆ど無い、


 その警備にしても、一見普段と変わらないが、どうにも微妙に、配置がおかしい。


 なんだか、誰かの思惑をビンビンと感じるというか……。


「っと、これは……」


 そんな明らかに様子がおかしい地下本部の中で、一際おかしな反応を検知した俺は、急いでそこへと向かうため、全速力で駆け出す。


 目的地は、地下本部にある、最高幹部たちのプライベートルーム前。


 そこで、あまりに明確な戦闘が行われていることを示す反応が、ハッキリと出ていたからだ。




「おぉ! いいところに来たぞい! シュバルカイザー!」


 命気プラーナを使い、カイザースーツの機能をフルに発揮すれば、目標の地点に辿り着くのには、数瞬もかからない。風よりも速く現れた俺に、目ざとく気づいた祖父ロボが、嬉しそうな声を上げたのを確認しつつ、俺はこの場の状況を目撃する。


「――ッ!」


 最高幹部たちのプライベートルームへの扉が並んだ廊下は、一目で戦闘が行われたと分かる、凄惨な破壊痕のせいで、ボロボロになっていた。肝心の扉自体には、傷一つ付いていなかったが。


 それはいい。

 問題は、別にある。


「そ、総統ちゃん……」

「ゴフッ……、な、情けないっス……」

「……か、完全敗北……。申し訳ない……」


 俺のよく知る怪人三人組が、ズタズタになって、地面に倒れ伏している。


「チッ! もう新手か!」


 そして、そんな三人を見下みおろすように、あるいは見下みくだすように、どこかの特殊部隊のような恰好をした、見知らぬ男が、そこにいた。


 つまり、こいつが敵ってことだ!


「――ハッ!」


 この場に駆け付けた勢いそのままに、俺は一瞬沸騰しかけた怒りを意識的に鎮め、代りに強く握りしめた拳を突き出して、敵に向かって、初撃を放つ。


「クッ!」


 俺の拳を素早く避けた敵対者に向かって、俺は更に、魔術を使って相手を拘束しようと、魔方陣を展開したのだが、それすらも回避されてしまった。


 魔素が見えた……、という感じでもない。なにか分からないが、言い知れぬ危機感に駆られたために、その場から大きく離れた、みたいな動きだった。


 勘が鋭い……、いや、もしかしたら、超感覚ちょうかんかくたぐいだろうか? 先ほどからこちらも、自分の超感覚を使っているのだが、この目の前の男を手早く倒すビジョンが、イマイチ浮かんでこない。


 まぁ、だからと言って、別に負ける気もしないわけだが。


「――シット!」


 敵対者が悪態を吐きながら、俺から距離を取るために、大きく後ろに跳躍すると同時に、小さく両腕を振った瞬間、この廊下を塞ぐように、無数のワイヤートラップが敷き詰められたが、正直、物の数ではない。


 俺はカイザースーツの性能に物を言わせ、強行突破する。


「喰らえ!」

「ウオオオオオオオン!」


 しかし、謎の男は、強引な俺の一撃をギリギリでかわすと共に、次の瞬間、その身体を大きく変化させ、える。


 人の姿をしていたはずの男は、一瞬で、狼のような姿に変わった。


 超感覚の件もあるので、奴が命気をまとったのかと思ったが、違う。明らかに、骨格レベルで変化しているその異形は、命気を使ったというよりも、怪人に変身したと表現した方が、正しいだろう。


「ガアアアッ!」

「――ッ!」


 狼人間へと変化した男の繰り出した、巨大な爪による一撃を避けた瞬間、俺は失敗したと感じた。


 狼男の目的は、最初から俺に攻撃を当てることではく、当初から変わらず、俺から距離を取ることだったのだ。


「グルルルルッ!」


 見事に俺から離れることに成功し、こちらに向かって唸っている狼男を見ながら、俺は本当に失敗したと、痛感した。



 あのクソ狼のことは、どうしても自分で、一発ぶん殴りたかったのに。



「どっせえええええーい!」 

「――ギャイン!」


 風よりも……、いや、雷よりもはやく、突如この場に乱入したレオリアが、空気を切り裂きながら、まさに稲妻の如く、狼男を蹴り飛ばした。


 帰還したレオリアが電光石火、瞬時に本部の異変を察知して、戦闘が行われている現場にやってくるまで、一瞬すらかからなかった。


「よっ、総統! 約束通り、本部で会えたな!」

「……まぁ、普通は会えるんですけどね。こんな状況とは思わなかったけど」


 カイザースーツのセンサーで、レオリアが帰ってきたことを察知した瞬間から、俺には、こうなることが分かっていた。


 自分で一発ぶん殴ることができなかったのは残念だけど、なんにせよ、破壊王獣レオリアの一撃によって、この戦闘も終結か……、と思いきや。


「……ビッチ! かすっただけで、この威力かよ!」


 なんと、あのレオリアの攻撃を受けてなお、狼男は健在だった。


 直撃したと思ったのだが、どうやら、あの光速にも匹敵しそうなレオリアの蹴りを受けながら、狼男は咄嗟の身のこなしによりダメージを極限まで削ぎ落とし、その上蹴られた反動まで利用して、俺たちから離れることに成功している。


 なかなかしぶとい……、というより、もうすでに、かなり厄介なレベルだ。


「――ヘイ、ボス! 同時にあの二人が相手じゃ、流石にどうしようもないぜ! さっさと回収してくれ!」


 狼男が中空に向けて叫ぶと同時に、その身体が掻き消えてしまう。まさに一瞬で、呼び止める暇すらなかった。


 カイザースーツのセンサーが、僅かに空間の揺らぎを検知したため、おそらくワープのたぐいだろう。気が付いた瞬間には、狼男の姿は、もう完全に、この場所から消えていた。


「逃がした……、か」


 俺の呟きが、敵のいなくなった戦場に、虚しく響く。


 怪人三人を相手に圧勝しながら、おごらず、状況判断が早く、敵わないと見るや否や即座に撤退、きちんと逃げの手段も用意してある。


 どうやら、本当にかなり面倒な敵が、新たに現れたようだ。


「いやー、助かったぞい、統斗すみと! レオリア!」

「助かったぞい、じゃねーよ! これって、じいちゃんが前に言ってたとやらの結果だろーが! どこが良い考えなんだよ! 怪我人出てるじゃねーか!」


 物陰からノコノコと出てきた祖父ロボに向かって、俺はついつい、声を荒げてしまった、


 普通に考えるなら、通常の警備体制を敷いてさえいれば、この地下本部に敵の侵入を許すなんて、まずありえない。特に最近は、ワールドイーターを警戒していたのだから、尚更だ。


 つまり、わざわざ最高幹部のうち二人を出張させて、残りの一人も、あからさまな陽動にわざと引っかかるように出撃させ、しかも、それに合わせて地下本部の警備シフトまで変更しているとなれば、これはもう誰が考えても、この事態の原因は、一目瞭然だった。


「虎穴に入らざれば虎子を得ず……、いや、虎穴に招き入れねば狩人は狩れず……、と思ったんじゃがのう。思ったより、手厳しい相手が釣れてしもうたな。思わずワシも、奥の手であるフルアーマー形態をお披露目せねばならんかと焦ったわい! カッカッカッカッ!」


 なんだフルアーマー祖父ロボって。胡散臭い。


 そう思っても、口には出さない。

 今はイマイチ、祖父ロボの軽口に乗るような気分ではなかった。


「おーい、救護班! こっちこっち! 早く来てくれー!」

「……うぅっ……、情けないわ~ん……」

「……む、無念っス……。あいたた……」

「……痛い……。フフフ……、痛い……」


 レオリアが呼び出した、看護師姿の戦闘員に救急措置されながら、タンカで運び出されていくローズさんたちの怪我は、思ったよりも深そうだ。


 怪人が負けるのは、いつものこと……、なんて言ってしまうと、彼らに失礼だが、しかし、今回は様子が違う。それこそ、いつもなら負ければ撤退すればいいだけの話なのだが、今回は敵が地下本部の中にまで攻め入ってしまったために、ローズさんたちは逃げるようなことはせず、敗北が確定した後でも、本部を守るために、ひたすら闘い続けてしまったようだ。


 俺が、もっと早く戻っていれば……。


 なんて後悔は、まさに後の祭りでしかない。取り返しのつかない失敗ほど気落ちするものだと、俺は久しぶりに思い知っていた。


「みんな、大したことないといいんだけど……」


 俺が小声で漏らした心配は、どうやら悪の総統らしくないと判断されたようで、カイザースーツにより、カットされてしまった。


 マジカルイエロー……、黄村ひかりの件。

 作戦とはいえ、厄介な敵を、この本部へと侵入させてしまった件。

 そして、怪我をしてしまった怪人たちの件。


 突然、降って湧いたように積み上がった問題の数々に、なんだか目が回ってしまいそうだ……。


「はぁ……」


 俺は、山積する不安を前に、重苦しい溜息を吐き出すので、精一杯だったのだが、それすらも、やはり悪の総統として相応しくなかったのか、カイザースーツにカットされてしまうのだった……。


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