受験、不正、疑惑、そして一人の死。短い作品の中で手掛かりが次々に置かれ、疑う相手が少しずつ変わっていくので、一気に最後まで読んでしまいました。特に印象に残ったのは、「不正を防ぐ」という一見まっとうな行為が、登場人物それぞれの過去や思いと結びつくことで、単純な正義ではなくなっていくところです。冒頭では何気なく見えたものにも意味があり、最後まで読むと最初へ戻って確かめたくなる。謎解きだけで終わらず、「正しさとは何だろう」と少し苦いものを残してくれる短編でした。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(114文字)
往時のような受験競争は少子化で沈静化しているものと思っていましたが、実態は、少子化になればなったで苛烈な現状があるとも聞きます。児童の保護と健全育成を高らかに謳いながら、大人の世界の序章でしかない無慈悲な競争と自己責任を冷酷に強いるこの社会。この惨劇は、その狂気が貪欲な牙をちらりと覗かせたに過ぎないのかも知れません――。