私じゃないわたし
孤兎葉野 あや
第1話
「森野さん、大変よ!」
蒸し暑い夏の夜、陸上部の練習を終えて、後片付けをしていると、同学年の三人が慌てた顔でやって来る。
「うん? 何かあったの?」
「一年生の子達が、何人か抜け出したそうなんだけど……」
「ああ、打ち上げ気分で、ファミレスにでも行っちゃったとか?」
合宿という名の、いくつかの教室を部で借りて、寝泊まり付きでの集中的な練習も、今日で終わり。
一年の頃の私達も、そんな雰囲気になりかけたし、浮かれた気分になるのも仕方ないか……バレたら、怒られるのは間違いないけれど。
「それが……肝試しに行くって……」
「はあ?」
「しかも、昔に火事か何かがあった、廃墟らしくてね」
「ネット上では、心霊スポットと呼ばれてるみたいなの……」
「その子達、何考えてるの? 不法侵入まっしぐらでしょ!」
皆が表情を曇らせて話す情報を聞くと、バレて捕まって、部の活動も停止……なんて最悪の想像が浮かんでくる。
「他の一年生達も、止めてはくれたんだけど、それでも何人か行っちゃったらしくて……このままじゃまずいよね」
「うん! すぐに止めに行こう!」
「そ、そうだよね、行かないと……」
「ん……? ああ、私は霊感とかそういうの、全然無いから! もし恐かったら、私の後ろにでも居ればいいよ!」
「えっ……! 森野さん、頼もしすぎる……うん、本当は恐いけど、それなら行けそうかも」
そうして、少し震えながら付いてくる、同学年の子達と一緒に、私は後輩達の後を追い始めた。
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