私達の中に殺人犯がいる

坂道冬秋

第一話~姉の死体~

「キャー!」


 私達の背後で、弥生さんの叫び声が聞こえた。彼女は、この屋敷に通う家政婦だ。


「お嬢様、これは……」


 弥生さんの言葉は、最後まで続かなかった。彼女は、私達の目の前に転がっている物体を見て、絶句しているようだった。


 私達の目の前には、私の姉だった物が横たわっていた。仰向けに倒れているそれは、姉の死体だった。


「ハア、ハア、ハア……」


 私の呼吸が荒くなっていた。姉の無残な姿を見て思考が止まる。そして、崩れ落ちた私は、固い床に座り込む。


「すぐに警察を呼んで下さい! 」


 文香(フミカ)が、弥生さんに言った。このような状況で冷静に対応できるところが、凄いと思った。


 日頃から冷静な彼女だからできることだろうと思う。


「わ、わかりました……」


 弥生さんは、震える声でそう答えて、急いで部屋を出て行った。


 この部屋は、広間だ。


 私達が住む、この屋敷で一番広い部屋だと言える。この広間の真ん中で、私の姉、神宮寺真由美は死んでいる。


 血だまりの上に、白いワンピースを赤く染めて。


「姉さん……」


「マキ、落ち着いて、ゆっくり深呼吸をして」


 フミカが優しく私に言った。私は、まだ荒い呼吸で、姉の真由美を見つめていた。


 何故か、目が離せなかったのだ。その様子を見て、他の皆も心配しているようだった。


「本当に死んでいるのですか? 」


 千秋(チアキ)が震えながら言った。


「嘘だよね? 真由美ちゃんが死ぬなんて……」


 歩美(アユミ)が手で口を押えながら言った。


「これって、誰かに殺されたって事だよな……」


 いつも勝ち気な、夏希(ナツキ)でさえ、動揺しているようだった。当然だ。今まで一緒に暮らしてきた真由美姉さんが、死んだのだから。


「あきらかに、真由美さんは誰かに殺されているわ! 」


 冷静なフミカが言った。まだ、混乱している私達に諭すように、事実をだけを口にする。


「なんで、そんなに冷静でいられるの?! 」


 小心者の聡美(サトミ)は、極端に動揺している。興奮して、叫んでいた。


「落ち着きなよ、サトミ。大きな声を出しても意味ないでしょ」


 香織(カオリ)が言った。いつも無気力に見えるカオリが、そんな風に言うのは意外だった。


「そうね、落ち着きましょう」


 フミカが冷静に言った。今、この広間には、私も含めて七人が居る。


 アユミ、カオリ、サトミ、チアキ、ナツキ、フミカと、私、真紀(マキ)の七人だ。


 そして、昨夜から現在にかけて、この屋敷には、私達七人と真由美姉さんしか居なかった。


 皆も薄々気付いているのだろう。真由美姉さんを殺した犯人が、この七人の中にいるだろう事に。


「真由美姉さんを……」


 私は、それ以上言葉に出来なかった。私がそう呟いた事で、全員が黙り込む。そう、ここにいる皆が疑心暗鬼になり始めている。


 私達七人の中の殺人者が誰なのか、探りはじめている。


 まだ、真由美姉さんの死に実感の沸かない私は、ただ茫然とする事しか出来なかった。



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