私の嘘告が全てを壊した ――(旧タイトル:幼馴染の嘘告で俺は人を信じられなくなった ―でも義妹だけは諦めなかった)

ヤモ🍈

中学生編(序曲〜プロローグ〜)

第1話 嘘告


「雨草(あまくさ)くん、好きです。私と付き合ってください」


まただ、嘘告か? もうこの高校に入って何度目だよ。


目の前の女子は頬を赤く染めて、恥ずかしそうに俺を見ている。

普通なら嬉しいんだろうな。


告白されて、相手が可愛い女の子なら舞い上がってもおかしくない。


でも、俺にはその手の嘘は通じないからな。

期待なんてしない。


人の「好き」なんて言葉を、簡単に信じたりもしない。


なんせ中学生の時に酷い目にあった。


幼馴染の海月(みつき)に告白された――いや、嘘告だけどな。


あの頃の俺は、今とは違った。

「好き」と言われれば、その言葉を信じることができた。


ましてや、その相手が海月なら疑う理由なんてなかった。


俺は、海月のことが物心ついた頃から好きだった。


だから――あの日のことは、今でも忘れられない。


海月から携帯にメッセージが入っていた。


『放課後、屋上に来てくれない?』


珍しいな、海月から呼び出し?

何か話でもあるのか。


そう思いながらも、心のどこかでは期待していた。


もしかして――。


いやいや、そんなわけないだろ。


海月とは幼い頃から一緒にいる。

学校でも目立つ美少女で、いつも周囲には人がいる。


そんな海月が俺を?


あり得ない。


そう思っているはずなのに、屋上へ向かう足は自然と速くなっていた。


階段を上る。

一段。また一段。


心臓の音まで少しずつ大きくなっていく。


屋上の扉を開けると、海月が一人で俺を待っていた。

俺に気づいた海月がこちらを見る。


二人きり。


本当に、俺だけを呼び出したんだ。


「これは……告白か?」


そんな考えが頭をよぎった。

俺はその時、期待してしまった。


そもそも、これが俺の間違いだったと後に知ることになるのだが――その時の俺は、そう、舞い上がっていたという言葉が当てはまるだろう。


だって仕方ないだろ。


十年以上好きだった女の子が、放課後の屋上に俺だけを呼び出したんだから。


海月の言葉に期待してしまった。


その時を今でも思い出す。


風が吹いていた。

海月の髪が揺れている。


俺は何も言わず、海月の次の言葉を静かに待った。


心臓が高鳴る。


期待して良いのかな?


「悠夜……えっとね……」


「ん? 海月、何?」


海月が一度だけ俯いた。

その僅かな沈黙さえ、俺には恥ずかしがっているように見えた。


そして海月は顔を上げた。


「私……悠夜が好きだよ……付き合ってください……」


一瞬、何を言われたのか分からなかった。


俺を?

海月が?

本当に?


次の瞬間、胸の奥から一気に何かが込み上げてきた。


やった!

嬉しい!


ほんとに海月が俺を好きになってくれるなんて夢みたいだ!


夢なら覚めるな!


ずっと好きだった。

何度も諦めようと思った。


俺なんかじゃ海月には釣り合わないと思っていた。


それなのに――。


「えっと……返事は?」


「あっ……もちろん、こんな俺で良ければよろしくお願いします」


「ありがとう……悠夜……」


何、言ってるんだよ。

こっちの方がありがとうだよ。


嬉しいのに、それと同時に「こんな俺でいいのかよ」という疑問が芽生える。


なんせ、海月はこの月浜中学でもカースト上位の美少女だ。

俺なんかが釣り合うはずがないんだけどな。


ここが俺の弱いところだ。

自分に自信がない。


だから、聞いてしまった。


「こんな、俺でいいの?」


海月は俺を見つめている。


出会ってから十年以上。

こんな日が来るなんて思ってもいなかった。


俺は次の言葉を待つ。


「悠夜が良いんだよ……」


その言葉だけで十分だった。嬉しい。


こんなことってあるのかよ。


「ありがとう。海月、これからもよろしく」


「うん……悠夜、じゃあ……また明日ね……」


また明日。


今まで何度も交わしてきた言葉なのに、今日は全然違って聞こえた。


明日から俺と海月は幼馴染じゃない。


恋人なんだ。


俺は海月と別れた後、嬉しくて走って帰った。


足が軽い。

いつもの帰り道まで違って見える。


他の人が見たらどう思うだろうか?


「相当、顔もニヤけてるよな」


頬に手を当てても笑みが消えない。


でも、嬉しいんだからしょうがない。


帰ったら、妹の穂月(ほつき)にも話そう。

穂月は昔から海月と仲が良いから喜ぶと思う。


母さんと父さん達も昔からの家族ぐるみの付き合いだ。


父さんはもう亡くなっているけど……でも、良い報告が出来る。


「きっと、喜んでくれるよな」


家に帰ったらまずは報告しよう。


「みんな祝福してくれるに決まってる」


家が近いっていうのもあるけど、俺と海月が幼少期からの幼馴染ってことが一番なんだよな。


「ただいま」


「お帰り! 悠兄!」


「穂月ただいま!」


いつもの声。

いつもの家。


でも今日は、早く誰かに話したくて仕方がなかった。


「母さんいるかな?」


「まだ、仕事から帰って来てないよ」


そっか、まだか。


でも穂月を一番にビックリさせるのも悪くないかもしれない。


穂月は俺が海月を好きなのを知ってるはずだ。

態度に出てるからな。


バレて当たり前まである。


そんなことを考えていると自然に顔がニヤけてしまう。


「なあ、穂月、ちょっと話せるか?」


「良いよ、悠兄」


「実はな……海月から告白されたんだ……」


穂月はすぐには答えなかった。


ほんの一拍。


俺の顔を見て、それからいつものように笑った。


「おめでとう、悠兄」


「あ……ありがとう」


穂月は笑顔で俺を祝福してくれている。

この笑顔に何回助けられただろうか。


俺と穂月は血が繋がっていない。


義妹ってやつだ。


俺の母親と穂月の父親が結婚したのは、穂月が五歳、俺が六歳の時。


穂月が素直だったこともあって、俺たちが打ち解けるのは早かったと思う。


穂月が十歳、俺が十一歳の時に義理の父さんが亡くなった。


俺より、実の父親を亡くした穂月の方が何倍も辛かったと思う。


それなのに穂月は、仕事で家にいない母さんの代わりに炊事や洗濯までしてくれている。


俺にとって妹であり、大切な家族だ。


「なあ、穂月……いつも笑顔をありがとう」


「恥ずいな……悠兄……それより良かったね」


「うん……」


恥ずかしかった俺は、そんな返事しか出来なかった。


「穂月、俺は部屋に行くな。海月にお礼を言いたいんだ。お礼っておかしいか? また、後でな」


「うん」


俺は階段を上がっていった。


その時の俺は知らなかった。


さっきまで当たり前だったものが、あと少しで全部壊れることを。



――――――――



スマホが震える。


メッセージ?

誰だろう?


私はスマホを手に取った。


画面を見た瞬間、指が止まった。


えっ?

何これ?

動画?


そこに表示されていた文字を見て、息が止まりそうになった。


「和泉(いずみ) 悠夜、嘘告拡散中」


どういうこと?


悠兄は海月ちゃんから告白されたって言ったよね?


さっき、あんなに嬉しそうだった。

あんな顔をした悠兄を、私は久しぶりに見た。


私の背筋に冷たいものが走った。


「えっ? 嘘だよね?」


動画を開くのが怖い。


開いたら、何かが終わってしまう気がした。


まさかね。

そんなはずないよね?


海月ちゃん?


「怖い……」


それでも確認しないわけにはいかなかった。


私はラノンの動画を再生した。


画面の中に映っていたのは――さっき悠兄が嬉しそうに話していた、その告白だった。


でも、私が聞かされていた話とは意味が違う。


これって……。

酷い……。


「嘘告……」


指先が震える。


私のところにメッセージが来ているってことは、悠兄のところにも……。


その瞬間、身体が勝手に動いた。


「早く! 悠兄のところに行かなくちゃ!」


間に合って!

悠兄、そんな物は見ないでよ!


階段へ向かう。


やけに足が重い。


いつもなら悠兄の部屋まで近くに感じるのに、今日は一段一段が異様に長く感じる。


心臓が痛いくらい鳴っている。


お願い。

まだ見てないで。


お願いだから――。


悠兄の部屋まで遠く感じるのは、何故だろう?


ガチャ――。


「悠兄……何を見てるの?」


悠兄はスマホを持っていた。


泣いていない。

怒ってもいない。


ただ、画面を見ていた。


「いやさ、今ね、海月にメッセージでお礼をしたんだよ。俺なんかを好きになってくれてありがとうって」


「悠兄……」


声が出ない。


「したらさ……スクショと一緒にこんな動画がクラスのグループメッセージで送られてきたんだよ。それがおかしくってさ、穂月も一緒に見るか?」


「えっ?」


笑っている。

悠兄が笑っている。


でも、さっきまでの笑顔じゃない。


目が笑っていない。


悠兄の目からハイライトが消えていた。


泣いてくれた方がまだ良かった。

怒ってくれた方がまだ良かった。


なのに、何でそんな普通の声で話してるの?


今、何を考えてるの?

私に出来ることはないの?


「どうした? 穂月? 海月は幼稚園の頃から演技が上手いんだよ。俺の自慢の幼馴染だよ」


やめて。


そんなこと言わないでよ。


さっきまで、あんなに嬉しそうだったじゃん。

海月ちゃんのことが大好きだったじゃん。


そんな……笑顔で助けられてるのは私の方だよ。


悠兄……悠兄は優しいからさ……。


だから――。


ああ……ああ……ああ……。


どうして。


どうして、お前はこんなことをしたんだ。


「嘘告」なんて最低なことを……。


悠兄の顔を見る。


いつも私を安心させてくれた人が、目の前で壊れていく。


何も出来ない。

止められなかった。


間に合わなかった。


ガシャ――。


私の頭の中の何かが音を立てて崩れた。


いや。


壊れたんだ。


この瞬間、私の中でも何かが変わった。


「海月……お前が……私の大切な人を壊したのか!!」














―――――――――――――――


お読み頂きありがとうございます。

暑くなりましたので、お体をご自愛ください。


☆レビュー、ブクマ、♡の読者様ありがとうございます。

全ての読者様に感謝しています。


物語は私1人では作っていけません。


感想、コメントなども頂けると嬉しいです。

今後、最後には全てのコメントにお答えします。

お待ちください。


読者様のコメントは勉強になります。

私は全て読んでますよ。


もし続きが気になりましたら、下の☆で応援よろしくお願い致します。


◆こちらも、よろしくお願い致します。


恋人をNTRれたら、俺を園芸部の部長が育て始めた。 - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/2912051606416251321




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