この作品は、土地に残された古い習慣や決まりごとを通して、人と怪異が共存する町の姿を丁寧に描いた作品だと思います。
特に印象に残ったのが、祠坂の返し石を配信者が動かしたことで、子どもたちが知らない道へ迷い込むエピソードです。怪異を力で退治するのではなく、石や供え皿を本来の向きへ戻し、人の道と向こう側の道を分け直すという解決方法に、この作品ならではの個性を感じました。
また、迎え灯祭で毎年空けられていた場所を屋台で埋めた結果、提灯が元の位置へ戻り続けるエピソードも印象的です。一見すると意味のない空白にも、帰る場所を失ったものを祭りへ紛れ込ませない役割があり、理由が忘れられても土地の作法だけが残っているという構造に説得力があります。
単なる怪異やホラーを描いた物語ではなく、忘れられた記憶や習慣を掘り起こし、乱れた順番を本来の形へ整えることが、物語の芯になっているように感じました。
さらに、事件が収まった後に喫茶あさがおの食事や日常へ戻る場面があることで、不穏さだけでなく、人が帰る場所の温かさまで伝わってきます。
序盤までの紹介となりますが、今後この町に残された記憶や、柊羽と凪紗の関係がどのように描かれていくのか、これからも追いかけて行きたいと思います
第1章を読んだ段階でのレビューですが。
ゾクリとして、本当に怖く。引き込まれそうになりました。
港町を舞台に、作者様は日常と怪異を、とても静かな筆致で紡がれていて。
派手に脅かすんじゃない。
むしろ、日常の隙間に潜む「裏側」を、そっと覗かせてくる。それが、たまらなく怖い!
読みながら、ふと気づいたんです。
昔から町に伝わっていたはずの、ちょっとした決まりごと。
今の僕たちは、いつの間にかそれを忘れてしまっている気がします。
だからこそ、失われたものにうっかり触れてしまったような、ひやりとする感覚が残る。
そしてもう一つ。
主人公と、その恋人。
恋人でありながら、彼女には彼の知らない一面がある。
それでも二人は、日常をひとつずつ積み重ねていく。
この「知っているようで知らない」距離感。
これ、単なる怪異譚の設定というより、人と人(あるいはそれ以上の関係)が少しずつ理解し合っていく過程、そのものだと思うんです。
個人的には、こういう"分かり合えなさ"を丁寧に描く物語に弱いので、読みながら何度も唸ってしまいました。
そして何より。
坂道の湿った空気、町の灯り、そのひとつひとつの描写が緻密で。
作者様の筆力の高さに、羨ましくなる(笑)
前述した通り、まだ第一章を読んだだけですが。
この町の奥に、まだ何か隠れている気配がします……。
続きを、一緒に覗きに行きませんか?
日常と怪異の境界が、これほど自然に溶け合う作品は珍しいです‼️
喫茶店の温かな日常、美味しそうな料理、そして「帰る」という何気ない行為が、少しずつ不穏な意味を帯びていく構成に引き込まれました✨
派手な恐怖ではなく、「名前を呼ばれても返事をしない」「返し石」「帰ってくる味」といった土地に根付いた風習が、じわじわと背筋を冷やしていきます。
それでいて、人を怖がらせるだけでは終わらず、最後には「帰ってこられる場所」の温かさまで描かれているのが印象的でした😁
読み進めるほどに、喫茶あさがおで交わされる何気ない会話や食事が愛おしくなり、凪紗の正体や、この町に隠された秘密がますます気になります‼️
優しいのに怖い。怖いのに、どこか懐かしい。
そんな空気を味わえる、和風民俗ホラーが好きな方にぜひおすすめしたい作品です。
舞台は瀬戸内の港町ですが、全国各地に古い言い伝えや、穢れに触れてはいけない場所などがあると思います。
近寄らないのが最も安全ですが、生活をするうえで戒めは昔話に置き換えられ、忘れてしまう。そんないくつかの場所に秘められたお話を、本作の主人公たちは過去を探り、不思議に寄り添い、整えて、あるべき姿を記憶に残していく。
ホラーの香りは、強すぎず、弱すぎず。
作者様のその加減が絶妙で、物語の品格を下げること無く、ホラー要素を盛り込んでいます。
粛々と綴られる怪異現象と人間ドラマ、これを読まないのはもったいない。
是非、この作品に触れて頂き、皆様が暮らす街の何気ない景色や、規則的な人の流れなどに、足を止めて見てはいかがでしょう。
当たり前は、もしかしたら誰かが整えているのかも知れません。
ノスタルジックな和風ホラー、おすすめです。
まずは、ご一読をよろしくお願いします。
瀬戸内の港町・帆ノ緒市を舞台に、喫茶あさがお、坂道、祭り、旧映画館通りなど、町の中に残る小さな怪異と向き合っていく物語です。
この作品を読んでいて強く感じたのは、怪異そのものの怖さ以上に、「町に残ってしまったもの」へのまなざしの優しさでした。
帰り道がずれる子どもたち。
どこか落ち着かない灯り。
届かなかった言葉。
受け取りに来なかった写真。
どれも派手に襲いかかってくる恐怖ではありません。
けれど、日常の中にほんの少しだけ混じった違和感が、静かに、確実に胸の奥へ残っていきます。
凪紗は怪異を力で祓うのではなく、向きや順番を読み、返すべきものを返していく。
柊羽は紙や記録、人の言葉をたどりながら、置き場所を失った出来事に居場所を与えていく。
この二人の役割がとても美しく、怪異譚でありながら、町の記憶をそっと整えていく物語のようにも感じました。
また、食べ物の描写が本当に印象的です。
鱧、だし茶漬け、たこ飯、潮汁、プリン。
どれもただ美味しそうなだけではなく、「人が帰ってくる味」として物語に深く結びついています。
怖い場面のあとに食卓の温かさがあることで、この町で生きている人たちの暮らしまで大切に思えてきました。
失われたもの、言えなかった言葉、帰りそびれた気配。
それらを無理に消すのではなく、ちゃんとあるべき場所へ返していく。
静かな不穏さと、懐かしさと、祈りのような優しさがある作品です。
読んだあと、いつもの道や、なじみの店や、町に残る小さな風習を、少し大切に見つめ直したくなりました。
瀬戸内の港町を舞台にした物語は、日常の小さな異変が描かれます。
帰り道が少しずれたりといった異変が続くと不気味さが増し、どんどん物語に引き込まれました。
ただ特徴的なのが、不気味さの中にも風景がどこか懐かしく、港町の穏やかな空気を感じ取れるところ。
そういった空気づくりが秀逸で、不穏でありながらの心地よさを読みながら感じたものです。
印象的だったのは、柊羽のもとへ「削除したはずの動画が消えない」と連絡が入り、不可解なコメントが次々投稿され始める場面。
現代のSNSや動画配信を通じたゾクリとする恐怖と、さらなる異変の広がりという構成の巧みさに驚きました。
まだ拝読の途中ですが、決して重いホラーではなく、ミステリー要素も織り交ぜた、人の想いに歩み寄る物語。
ぜひそんな静けさの漂う怪異譚をお楽しみください。
本作は、敵を退治するようなオカルトアクションではなく、主人公たちが町の言い伝えや順番を読み解き、ずれてしまった出来事に“置き場所”を与えるという、理知的なミステリー的要素をもつ一作です。
怪異を「倒す」のではなく「還す」という独自の民俗学風アプローチに加え、バディ要素もあり、お互いを補い合いながら町の調和を保っていく展開もまた、本作の魅力の1つと感じます。
作者様の手腕は、作品の空気づくりです。
喫茶店や古い街並み、祖父の日記を紐解く様子など、全体に漂う静かで、読み手は読み進めるほどにノスタルジーを感じる構造となっております。
瀬戸内の静かな港町を舞台に、記録を綴る青年と怪異を司る恋人が、町に生じる小さな歪みを優しく紐解き「還して、整えていく」民俗学ホラー×喫茶店ファンタジー。
伝奇を紐解くような、不安さとワクワクを味わいたい方はぜひ一度お読みください。
おすすめいたします。
冒頭から描かれる瀬戸内の港町・帆ノ緒市を舞台に、帰り道を見失った子どもや、向きを違えた祭りの灯り、写真に映るはずのない坂の景色など、少しだけずれた人や記憶、風景が描かれます。
不気味でありながら、どこか懐かしく切ない世界観が印象的でした。
特に心に残ったのは怪異への向き合い方です。凪紗は祓うのではなく、本来あるべき場所へ返し、柊羽は記録と言葉で居場所を与える。倒すのではなく整える、その静かな姿勢が作品全体を包んでいます。
港町の坂道や喫茶店の灯り、食卓を囲む時間など、丁寧に描かれる日常に異界が溶け込む空気も心地よく、派手な展開はなくとも、失われたものに静かに寄り添う物語が好きな方にはきっと響くはずです。読み終えたあと、自分の中の「帰るべき場所」を思い出したくなる、温かな余韻の残る作品でした。