【この作品は、是非読むべき作品です】
第一次世界大戦が勃発したきっかけ
『サラエボ事件』
教科書に必ず載っている、この事件だが
恥ずかしながら、私は、詳しい背景を知っていなかった
この事件によって、凶弾に倒れたのは
オーストリア次期皇帝夫妻
これ位は、教科書に書かれていたが
この夫妻が、実は世紀の大恋愛の末に結婚した
『身分違いの結婚』であったこと
この夫妻に、大切に育まれていた、3人の子供達が居たこと
生母の身分が低かった為に、冷遇され
継承権を生涯与えられなかったこと
次期皇帝夫妻を、殺傷した若者が放ったのは、たった2発の弾丸
その結果、世界の情勢が動き始めた
戦争を起こす為のきっかけを求めていた者達の思惑によって
歴史に埋もれた事実を、この物語によって知る事が出来た
人類は、戦争兵器の開発や、毒ガスの開発を、着々と進めていた
それを使った結果が、どうなるのか、想像もしないままに
愛する家族が戦場に消え
殺傷力の高い武器で肉片に変わってしまった
ちょっとそこまで行く感覚で
出兵して行く、夫や息子を送り出した
妻や母親達は
再び愛する、彼等のその姿を見る事は出来なかった
『戦死者:約2千万人』
そのきっかけは、ある若者の、ささやかな願いからだったのかも知れない。
今よりも楽な生活が送りたい。
祖国を開放して、自分の国を造りたい……。
あの皇帝さえ居なくなれば、この国は開放される。
そう思い込む事の、恐ろしさ。
抗えない地位の、弱い立場の市民の命であがなわれた、世界大戦。
その死者数、2千万人。
この命の重さを、歴史の真実の愚かさを、忘れてはいけない。
ヨーロッパの歴史ものが大得意なてっぺいさんが、1914年のサラエボ事件を題材に書かれた骨太の作品です。読み応えばっちりです。
サラエボ事件というと、「ええと、確かオーストリアの皇太子夫妻かなんかが凶弾に倒れて、第一次大戦とか、ロシア革命とかに繋がっていったんだよなあ。怪僧ラスプーチンとかいたなあ」くらいのイメージしかなかったのですが、本作を拝読して、こんなに深い人間臭いドラマが潜んでいたのかと驚きました。
本作の前半は、サラエボ事件の実況中継です。まるでフォーサイスの「ジャッカルの日」のように、被害者と加害者を俯瞰しながら、スリリングに事件の顛末が追われています。
後半は、それによって引き起こされた第一次大戦への怒涛の展開。オーストリアとセルビアだけで終わると思われた二国間の戦いが、大国ドイツ、そしてロシアの参戦の後、ベルギーを経てイギリスも加わり、ヨーロッパ全土を巻きこむ戦いに突入していきます。
愛国心に燃えた若者の、たった二発の凶弾から、2000万人が亡くなる大戦へと繋がっていくその連鎖が、丁寧でテンポのよい筆致で綴られ、登場人物の心情描写と合わせ、とても心に訴えてくるものがありました。
物語としても、史実の記録としても優れている本作。
わたくしはお勧め致します。