一瞬が 終わらない
- ★★★ Excellent!!!
仕事帰りの車中。
視界に現れた異物、道路脇に置かれた車。
それを〝見てしまったこと〟で状況が変わる。
通り過ぎたはずの一瞬。
運転者が振り返った。
その行為によって、観測される対象は観測する側”へと移る。
バックミラー越しに視線が合う。
うまり、目をつけられた。
視線という形で〝今この瞬間〟に過去が差しこまれた。
そして、時間は引き延ばされる。
すれ違うまでのわずかな瞬間が、異様な長さを持つ。
本来なら一瞬で通過するはずの光景が、粘つくように伸びる。
通過は終わらない。
読者もまた、その引き延ばされた時間の中に閉じ込められる。
物語が張り詰める。
通り過ぎたはずの過去が戻り、現在に干渉してくる。
運転者は、もう逃走できない。
“過ぎ去ったはずのものが、まだ終わっていない”
瞬間に取り込まれた運転手は、逃れられない。
彼の車が彼の棺となった瞬間である。
不可解で極上の恐怖の瞬間を描いた短編。
それが本作である。
是非、鑑賞されたし。