良い看護とは何か。 答えを出さないまま、600人を看取った看護師の記録
- ★★★ Excellent!!!
これは、軽く読み流せる作品ではない。
web小説だからこそ、読むことができる記録。
11話まで読んだ今、私はこの作品をきっと、ずっと忘れられないと思う。それほどの圧倒的なリアルを、蒼龍さんの読ませる文章能力と人となりのおかげで、強烈な体験として心に残ります。
この作品には、二つの軸があります。
一つは、正しい看護とは何か。病気に苦しむ人たちとどう向き合うのが正解なのか。看護師はどの立場で、どこまで踏み込むべきなのか。著者は何を思い、どのような判断をしたのか。
もう一つは、人の儚さ。それまでの人となりが病気によって崩れていく時、その人たちは何を思うのか。寄り添う家族は、変わっていく人に何を思うのか。著者は看護師という立場で、その両方に挟まれながら葛藤し続けます。
特に四話は、読んでいて苦しいほど胸に刺さりました。病気の理不尽さに、著者の口から神への不満がこぼれる。その一言に、看護というものの持つ重さと、一つの答えが静かに導かれていくのを感じました。
著者は、良い看護の場面と同じ熱量で、患者に心底嫌われた話、左遷同然の異動、心が壊れていった日々を書きます。医療という現場のリアルを惜しげもなく、描かれます。その誠実さが、この作品の芯だと思います。
この話では、正解は出でこない。その誠実な「未完」が、この作品をノンフィクションとしてより深く、よりリアルにしています。
つらい思いをしてまで、今日も医療の現場を支えてくれているすべての人々に、心からの感謝を。