青に燃える
はなびめい
青に燃える
震える手に全神経を集中させ、白いキャンバスを青く染める。
青は青でも淡い青から暗い青へ、だんだんと濃く、深く、まるで深海に沈んでいくように。
影を描く。
暗くて何も見えない。
ただ、その輪郭だけがわかる。
光を灯す。
影に馴染む、温かい光。
影の中の光はどんな光なのだろう。
賑やかな笑い声から優しい歌声、ペンを走らせる音。
灯された光には多種多様な光があった。
深い青に丸い金色。
まわりにはきらきらとした小さな光。
進む者に道を示す光だ。
すべてを描き終え、筆を置く。
「できた」
青年は満足そうに呟く。
古びた壁に飛んだ絵の具は乾いていた。
青年は絵が好きだった。
夢と希望が詰まっていて、人生の一片が閉じ込められている美しい世界。
あんな絵が描いてみたかった。
高くてなかなか買えない画材で、過去に一度だけ描いたことがある。
青く澄んだ湖と、そこに浮かぶ花弁の絵。
太陽の光を反射してきらきらと輝く水面。
その下を悠々と泳ぐ魚。
初めて描いたそれは、重なり合った色が混じってしまったり、滲んでいたり、輪郭が歪んでいたり。
拙さや粗が見てとれるような一枚だった。
けれど青年の目に映ったそれは、とても綺麗だった。
もう一度。
最後に描きたくて。
かき集めたなけなしのお金で買った絵の具とキャンバス。
青い絵の具は貴重で高価だったが、それでも青年は青を選ぶ。
一目惚れして以来、青年の心を乱し続ける青。
それは青年が抱く窓の向こうの一時の美しさを映し出していた。
青白い顔は苦痛に歪む。
ぜぇぜぇと荒い呼吸に混じって口元を抑える手から赤が零れ落ちる。
床に染みるそれは酷く鮮明で。
「く、うぅ...はぁ...ッげほっ」
胸元のシャツを握り締める手に一層力が入り、皺が寄る。
けれど絵を見つめる碧眼には、熱く燃える青い火のような美しさがあった。
もうすぐ尽きる命の灯火は、これで最後という時に情熱とともに、激しく燃えていた。
遠い未来、この作品が数多の人々の目に触れることを青年は知らない。
青に燃える はなびめい @me1_0919
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