喪失の痛みさえ、愛おしい。夜の底で紡がれる「代償」と「再生」の物語。
- ★★★ Excellent!!!
真夜中のアトリエ。そこは、何かを願う者が「代償」を支払い、運命を書き換える場所。
本作は、記憶や縁、そして才能といった、形のない「大切なもの」を削り取られる人々の姿を、淡々とした、しかし極めて美しい筆致で描き出します。
最大の見どころは、観測者である「守人」の変化です。
感情を凍らせ、数字でしか世界を測れなくなった彼が、人々の痛みに触れ、やがて自分自身の失った記憶と対峙する過程は、静かながらも圧倒的なカタルシスを覚えます。
「代償」の残酷さに背筋が凍り、失われたものの尊さに胸が締め付けられ、最後には確かな「人の温度」に救われる。
短編連作としてのテンポの良さと、文芸作品のような気品ある文章が融合した、極上のホラー・ファンタジーです。
一晩で読み終えてしまうのがもったいないほど、深い余韻に浸れる傑作です。ぜひ、静かな夜にページをめくってみてください。