儚い希望に囚われていた。だから抜け出せない

灼けつく土地。
熱気を帯びた空気が辺りを押し包むなか、幻のように佇むホテルがあった。

いまそこへ、ひとりの男がチェックインする。
彼は大きな悲しみを抱えていた。
厭わしい現実から逃れて、ここへ辿り着いたのだ。

〝救いに似たなにか〟 
〝後悔を埋め合わせるなにか〟
そんな微かな希望を求めて男が行き着いた場所。
ここは〝ホテル・カリフォルニア〟

ありえないことを願ってしまう心が流れ着く終着点。
幻想に囚われた者が沈んでいく、陥穽の底である。

この物語は夢を描いているのかもしれない。
それとも、幻覚の表現かもしれない。
読む者は、物語の見方を自ら決めなければならない。

もしも本作が幻覚の物語だとしたなら、彼はいつから現実を手放してしまったのか。
作中に明確な答えはない。

すべてが曖昧で、すべてが疑わしい。
奇妙な出来事の起きる理由も定かではない。
美しい表現の奇妙な物語は、読み手の定見さえ奪っていくのだ。

物語の結末もまた作中では明示されない。
だからこそ、言葉の断片を拾い集めて意味を編むのは読む者自身となる。

物語の解釈はあなた自身が探してほしい。
まるで宝探しのように見つけたこと。
それがあなただけの結末となるはずだから。

ここにあるのはそんな幻想と怪奇にみちた美しい物語。
心を騒がせる怪異譚である。