エピローグ
「本当に、由利がそこにいるの?」
由利を発見して彼女の家へと連れ帰ると、玄関を開けたご両親が訝しむ。ここにいますって言ったのに、俺の姿しか見えないので当然の反応だ。
が、その疑いを晴らすように由利が口を開く。
「ただいま。お父さん、お母さん」
「「⁉︎」」
いなくなっていた娘の声に、二人は目を大きく開く。
そして、母親が「本当に、うるま君の隣にいるの?」と再度訊ねる。俺が「はい。ここに触って下さい」と頷くと、二人は俺の横に手を伸ばす。
すると、何かに触れた感触に驚いて手を離すが、母親はすぐに抱き締めた。涙を流しながら。
どうして透明なのか。何処に行っていたのかよりも戻って来た安心感の方が強いのかもしれない。
それは俺も同じだ。由利が見つかって、本当に良かった。
その後、やはり言わなくてはと思ったのか由利は透明になった原因を説明をし、元に戻ると両親に約束する。やはり、姿が見えないままでは不安だと。
その約束を守る為、俺と由利はグミを購入した駄菓子屋に向かう。もちろん、俺が由利の手を引いて。
が、店の扉に「本日休み」と張り紙が貼られていた。
「閉まってるね?」
「マジかよ。いるかもしれないし、扉叩いて無理矢理呼ぶか」
「い、いいよ。別の日に来るから」
長袖の服を捲って壊す覚悟で言う俺を、由利は止める。由利がそう言うならと捲っていた袖を戻し、帰る事にする。いないなら、要はない。
「ごめんね、うるま」
帰路の途中、由利が唐突に謝罪して俺は足を止める。どうしたんだ?
その疑問に答えるように、由利は声を開く。照れたような口調で。
「うるまの告白、いつも曖昧にして……。その、はっきり答えた方が良いよね?」
「⁉︎」
*
私の見た目を気にせず、好きだって言ってくれるうるま。そのうるまの好意を曖昧にして、消えた私。
気にしないで良いって言ってくれたけど、それは駄目。ちゃんと答えないと。
私を捜す為に、一生懸命だった。騙される形だったけど、私の事を聞き出す為に赤道さんとも付き合ったうるま。
一方の私はどうだ? 自分の為だけにいなくなって、迷惑掛けて、我儘で。
そんな私が、いつまでも棚上げする事は許されない。今、はっきりとうるまとどういう関係になるか答えないといけない。だから、
「私の彼氏になって下さい」
私の告白に、うるまはすぐに「こちらこそ、お願いします!」と了承してくれた。両手を挙げて、よっしゃああ!」とも叫び、凄くテンション高い。私もうるまの彼女になれて、嬉しいけど。
……。
……ううん。嬉しがっちゃ駄目だ。
「私の彼氏になって下さい」と私は言った。謝罪しないといけない事した私が、上から目線でそう口にするなんて何様だろう。
うるまはそんな事気にしないと思う。だけど、私自身が許す事が出来ない。
自分の酷い見た目が無くなってほしいから、あのグミを食べた。その結果、姿が消えた。
だけど、本当に消さなくちゃいけなかったのは、私の心だ。我儘な、私の心。
だから、言い直した。
「私を、彼女にして下さい」と。
私の外見を取り戻すのを、うるまは手伝ってくれている。一生懸命に。
そのうるまに、私は答えないといけない。
自分の汚い心を、消す努力をしようと決意して。
完
見えない恋 目取眞 智栄三 @39tomo
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