桜に想う。繰り返される人の営みの尊さ。でもひんやりするのは何故?

咲き誇っては散り、最後は人に踏みにじられる桜の花弁。舞い散る花は、美しく煌めきますが、その密やかな終わりはどこか残酷にも思えます。

今を生きる人たちの足元には、過去の時代から無数の人の営み、ひいては『死』が積み重ねられている。散り際が美しいだけに、その末路の寂しさに、ひんやりとした恐ろしさを感じる。踏みしめた『死』がまだそこに「在る」と実感させる終盤の一文が、特に秀逸です。
命を次の世代へ受け継ぐ母親が見た桜と言う設定が、ここで活きている気がします。
文学的にも深いテーマを捉えた佳編。読み返せる話は少ないですがこれは、読むたびに得られるものが違う「読ませる」お話だと思います。