祈りで築いた都市が格差社会に――緻密に構築された本格SFが動き出す

※ 1章を読み終えたレビューとなります。

前作『銀河に還る祈り』でAIマリーが銀河をめぐった祈りの旅から、2000年後の未来。
祈りによって築かれたはずの都市が、差別と支配の装置へと変わっていた。その皮肉な構造から、物語は静かに幕を開けます。
続編とはいえ、本作から読んでも全く問題ないほど、しっかり作られています。

本作は本格的なSF小説です。
祈りの影響を受けやすいオリジンから、段々と人間に近づくミデア、そしてネオスへ。その進化の過程が、そのまま種族による階層差別として固定されている世界。その中で主人公たちが確かに生きて生活し、そして事件に巻き込まれていきます。

この世界観だからこそある、癖や習慣が、現実とかけ離れており、それでも納得してしまいます。
SFという自由度の高い物語構造の中で、世界観と伏線がしっかり丁寧に描かれており、するりと物語に入り込めます。
説明は物語の中に自然に溶け込んでいて、それが丁寧に回収されていく手腕は本当に見事です。

現在、2章の始まりまで読みましたが、主人公や登場人物、世界には謎や伏線が多く隠されており、紡がれていくのを楽しみに待っています。
前作よりもスケールは大きく、そして登場人物たちの息づかいはより近い。前作を愛した読者にも、本作から入る読者にも、等しくこのSFの世界にどっぷり入り込み、次の話をワクワクしながら待ってしまう物語です。