世にも醜い王子様の異世界転生は幸せに満ち溢れているらしい。ただし、元の世界は大変な模様。

時雨

それはそれは醜い第三王子様。

その世界の大きな大陸には、大小様々な国があり、魔物と呼ばれる異形の生物が跋扈する。


人族、獣人族、魔族、竜人族、妖精族。

各種族達は魔物の脅威に抗うべく手を取り合い、その生存圏を拡大縮小しながら歴史を歩んできた。


そんな厳しい環境で生き抜くため、神より与えられた能力、〈魔法〉や〈スキル〉を発展させてきた世界の名は《オース》。


《オース》の中でも比較的豊かなイルヴァズ国には三人の王子と三人の姫がいた。


第一王子は賢く、カリスマ溢れる王太子。


第二王子は武を極め、一騎当千と称される将軍。


三人の姫も見目麗しく、他国から縁談の申し込みが絶えないほどの美姫。


そんな兄妹の中に一人、第三王子だけは異質だった。


他の兄妹のような金髪碧眼とは全く違う、黒髪黒眼の醜い容姿。

魔法も使えなければ、スキルも上手く扱えない。

家族である王家だけでなく、その他の貴族や使用人、国民の全てから〈忌み子〉とされ嫌悪の対象となりながら。


でも、第三王子は努力家で、とても真面目な性格をしていた。


『俺が出来損ないなのは努力が足りないから』

 

醜いと罵られても日々を懸命に、生きて。



ある日、各国の大使を王城に招いて晩餐会が行われていた。

第三王子も珍しく会場に姿を見せていた。


というのも、『本日行う晩餐会に必ず出席しろ』と、普段は目も合わせない父、国王陛下から直々に言われてしまえば出席せざるを得なかった。

これまでは、醜い容姿を理由に『出席するな』と両親、兄妹から言われており、こういった社交の場は久しぶりだった第三王子は密かに晩餐会を楽しみにしていた。


もしかしたら、これまでの努力が報われる日がきたのかと、淡い期待を胸にーー。



 


「...いきなり俺への対応が変わるわけない。晩餐会の最中でも独りなのは、当たり前」

 

では何故、いまさらこんな晩餐会に呼ばれたのか。

暇を持て余していたので、立食形式ビュッフェとはいえ、贅を尽くした、普段は口にすることもない王宮料理に舌鼓を打つ。


「うん、美味い」




ホールをまわっていた給仕の男から、口直しにシャンパンを受け取り口に運ぶ。


パリンッ、ガシャン...バタッ


喉を掻き毟るように蹲り、血を吐きながら床へ倒れる。


「...ゆ、だ...んし、た...なぁ」


豪華な絨毯には、割れたグラスや皿の破片と料理、シャンパンと俺の吐いた血が、ゆっくりとその染みを広げていく。

 

もがき苦しみながら、なんとか見渡した会場で目にしたモノは。


酷く冷めきった目をした、家族や出席者の嘲笑。


未だ誰一人として駆けつけてこないのを見る限り、俺以外の全員が既知のことであったのだろう。


ゆっくりと目の前が霞みゆく中、『俺が何をしたんだよ』と心の中で吐き捨てると、ぷつりと意識が暗転した。



その日、第三王子は、ただただ愛されたい、という簡単だけど、自分には途轍もなく困難な希望を胸に秘めたまま、殺された死んだ









〜同刻、晩餐会会場〜


「やっとか...目障りなモノが消えた」

「そうですね、陛下父上

「やっと死んでくれたなぁ、愚弟よ」

「本当に。今まで何度毒を盛っても効かなかったから〈耐毒〉スキルでも持ってるかと思っていましたが、流石に〈即死呪毒〉は効果あったわね」

「...ホントに醜い顔。こんなのが兄だなんて、恥ずかしすぎるわ」

「(兄上...かわいそう。でも、そんな容姿に生まれた兄上が悪い)」

「陛下、おめでとうございます。やっとこの国の恥晒しがになくなりましたな」

「「「陛下、おめでとうございます!」」」


 王族や貴族達がそんな会話をする中、近衛兵達が、第三王子の死を確認し死体を運び出そうとしたその時、突然、会場にいる全員の頭の中に声が響き渡った。



《不快也、不快也》



《愚かなる人族共よ、我は不快也》



「何事だッ!!」

「近衛兵ッ!王族の方々を安全な場し」


ドガッ!!

グシャ、バキャ!


近衛兵達は突然、ナニカに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて意識を失う。

会場の人間達は第三王子の死体を中心に放たれる、強烈な威圧をその身に受け、その場で蹲ってしまう。


「な、何が、起きて、おるッ!」

「へ、陛、下...」



《不快也、実に不快也、人間共よ》



《我は全て観ていた》



《無垢な子に、外見の醜さを理由に毒を盛るその悪魔の如き愚かな所業》



《この子は貴様らに親愛の情を持っておった》



《いつかは家族の愛を与えられる日が訪れると、信じておった》



「「「「「...」」」」」



《この世界で生きる全てのヒト族よ、良く聴け。

 汝らは我、この世界の創造主たる我のあやめた。

 我は汝らに罰を課す。愚かにて傲慢で怠惰なヒト族よ、我は汝らを赦すまじ》



《聖神教の信徒共よ、我は神託を与えた。

 『愛し子を慈しみ、愛せ』、と。

 何故護らなんだ。不快也、赦すまじ》



《我を主と崇める愚かな信徒共よ、傾聴せよ。

 我が汝らに与えし加護や祝福恩恵は剥奪する。二度と我が声が届くと思うな》




その日、この世界の創造主である〈創造神〉と世界に奇跡を齎すと伝承されていた、創造神の寵愛を受けた〈愛し子〉が、《オース》からその存在を消した。

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