恋人と二人で、海に来た男。
頭上には夏の太陽がきらめいて、波は寄せては
又、退いてゆく。子供達を連れて来たのだろう
家族連れの姿も見える。
彼女がどうしてもと
選んだパラソルの下で
二人で波間で弁当を広げ、又海に入っては
波間ではしゃいだ。
視界に入る家族連れ。
恰も、儀式のように。
チリチリと肌を焼く日差しの
無意識の侵食の様に、いつの間にか
入り込む
異質なモノ
まるで映画を観る様に、情景が湧き上がる。
白い砂浜と青い海。青空と日差しの中で
繰り広げられるのはモノクロの何かだ。
掌編なので多くは書かない。ただ、無音の
モノクロの浜辺の中で唯一、パラソルの
赫さが静謐を切り裂く。
その、瞑闇のような 鮮やか さ。
海水浴の際は、お連れの方から目を離されませんよう、ご注意くださいませ。
海水浴の際はお連れの方から「決して」目を離さないでください。
──この海では、同伴者から一瞬たりとも目を離すな。
……理由は、私からはお伝えできません。
ただどうか、海では一緒に来た人から目を離さないでください。
絶対に、です。
一瞬でも、目を離してはいけません。
このまま海に行かれる?……然様ですか。
いいえ、私に貴方さまを止めることはできないでしょう。
え?……この先の海で、同伴者から目を離したらどうなるか試してみる?
……私に、貴方さまへ とやこう 申す権利はございませんが、一言だけ失礼致します。
海に行くのは大いに結構ですが、「同伴者から目を離すのはおすすめしません」。
それではどうか私の言葉を忘れずに──いってらっしゃいませ。