私この前、死亡しましたwwwwwwwwヤバwwwwwwwww
馬村 ありん
第1話
先日死にましたので、その日のことを書こうと思います。
その日の昼、私は知り合いの
「おらどけこの野郎、チンピラ、この野郎ぶっ殺すぞ」
サイドウインドウから半身乗り出し、前の運転席に向けて中指を立てました。
すると、前の運転手は自分の立場を知ったのか、道の脇にとまって道を譲ってくれたようでした。
徐行しながら横を通りざまに、運転席をのぞいてみると、そこにいたのは若い男でした。隣には彼と同じ歳ぐらいの女の子がいました。私は女の子に笑いかけましたが、あっちは怖がっていました。私のパンチパーマの頭と、銀歯だらけの前歯が恐ろしかったのかもしれません。
私がいつもこのようなことをしている人間と思わないでくださいね。基本的におとなしい人間なので、私が狙うのは青びょうたんみたいな若い男か、か弱い女性だけです。なお、お年寄りは逆上してくる人が多いので、注意が必要です。
「お嬢ちゃんじゃ〜ねぇ〜」
感じの良い笑顔ひとつを残し、私は通り過ぎました。
その後も
「よう、
木製の引き戸から家のなかに入っていくと、玄関兼居間は静かなものでした。
「なんだ? 仕事場かぁ?」
そこで私は、家の裏にまわり、仕事場に入りました。剛ちゃんはトタン板で囲まれた空間で、仕事中でした。仕事といっても、刺青の仕事ではなく、副業の方でした。死体処理です。
タンパク質を溶かす薬剤が入ったバケツが足元にいくつも置かれていました。その全てが赤く染まっていました。
「やってるねえ、剛ちゃん」
タバコをふかしながら中に入ると、剛ちゃんは「ハッパ?」と聞いてきました。
「違うよ。ただの
「なんだ」
剛ちゃんは黙って仕事に戻りました。ギコギコと板ノコを引いて骨を断ち、右腕を胴体から切り離しました。腕の付け根からじわじわと流れた血がステンレスの作業台を濡らしました。見事なものです。残った部品で椅子を作ったと自慢してきたこともあります。
「きょう髪型決まってんじゃん」
私は声をかけました。剛ちゃんの髪型は、モヒカンで、染めたばかりなのか赤いカラーが際立っていました。
「そう? 気に入ってんだよね、この頭」
こっちに向かって剛ちゃんは目を輝かせました。ラテックス製の手袋ごしに頬をぽりぽりとかくと、指についた血液でそこが赤く染まりました。
「今日はどうして来たの、連絡もなしにさあ?」
「なんか会いたくなっちゃって」
「嬉しいこと言ってくれんじゃん。嬉しい。嬉しいよォォォォォン」
そう言いながらボロボロと涙を流しました。きっと彼が
私も自分の言った言葉に偽りはありませんでしたし、とても嬉しい気持ちになりました。
「実はプレゼントがあってさ。この前、ジジイの家を
私は、コートのポケットからDVDケースを取り出しました。この時ポケットと間違えてほつれた穴に手を突っ込んでしまったのは内緒の話です。
「はい、これ欲しがってたやつだろ」
「これ、裏ビデオじゃん! 嬉しいなあ! 嬉しいよォォォォォン!」
そう言って泣きじゃくりました。
「剛ちゃん、裏ビコレクションしてたよね。喜ぶかと思って」
「これ、見たことのない番号のやつだったから嬉しいよ、あーちゃん!」
そう言ってパッケージをキラキラ輝く目で見ていました。
「こりゃ、俺もお礼しないとな。ほら、持っていってくれよ。芋、好きだろ」
彼は作業台の下にかがみ込み、何かを取り出しました。それは飲みかけの
「すげえ! どうしたのよ、コレ。ガチ高級品じゃん! 剛ちゃんの手取りで買えるもんじゃないでしょ!」
失礼を承知で、ついそのように口走りました。
「こいつからもらった。死んだ後で」
剛ちゃんは死体を指さしました。「つまり、それは泥棒をしたということなのでは」というツッコミは野暮というものなのでしませんでした。
「持ってって。あんまし好きじゃないし。ちょっと酸味あるし」
言葉の後半は蚊の鳴くような小さな声で話されていたこともあり、私は気に留めないことにしました。
「さっそく一口どうぞ」
「まあ、一口ぐらいなら」
私は飲みました。お酒のボキャブラリーはあまりないので、なんと表現していいか分からなかったのですが、とにかく美味しいお酒でした。喉がかあっと熱くなって幸せな気分になるのです。
「あんまり飲んじゃだめだよ。家の帰りに
「まあまあ」
飲めば飲むほどに不安が消し飛んでいきました。兄貴への
「まずいって。今度捕まったら、あーちゃんの執行猶予消えちまうよ〜」
「大丈夫だって。最悪、
帰り道はるんるん気分でした。私は有線ラジオから聞こえてきた男性アイドルの曲をノリノリで聴き入っていました。軽快な音楽に、頭を振り、肩をゆすり、両脚をぴくぴくさせました。楽しい。世の中はなんで楽しいんだろう。
でも、どうして意地悪する人がいるんだろう?
兄貴が私を叱責してきた思い出が蘇りました。不安に襲われました。そうだ、酒だ。酒を飲めばいい。
だけど、そんなことをしてはもちろん飲酒運転がバレる確率が高くなります。それは僕にとって良くないことでした。
エスコートされたホステスのごとく助手席に収まる酒瓶へと知らず知らず手が伸びていきました。酒瓶は、剛ちゃんの指から付着した血液で汚れている状態でしたが、あまり気になりませんでした。
『飲んでしまえよ。一気にさあ』
心の中の悪魔がささやきました。
『そのとおりだ。最後の一滴まで飲み干しちまえ』
心の中の天使がささやきました。
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