オンラインゲームは敵を倒して周回するコンテンツが主流なのでいかに短時間で効率よく周回することにプレイヤーは重きを置きがちですが…。
こちらの物語はそれとは正反対のオンラインでは避けられがちななりきりや趣味など何らかのこだわりあり、そんなユウたちのパーティー成長劇が描かれています。
トレンドからは外れた彼らのゲームプレイはとても楽しそうでかつ緊張感があります。
仕様を利用して固い敵を撃破してみたり、溜め技のようなロマン技を強敵にぶつける快感など、うまく表現されているなと。
ゲームを始めた時はマルチプレイや広い世界の新鮮さに心奪われていたはずですが、ゲームコンテンツを楽しむための周回が作業になってしまうのはオンラインゲームによくある話で、手段と目的が逆転してしまうのですね。
セコのチームはそんなトレンドとは逆にゲームを一生懸命楽しむのをモットーにしており、文章からもそれが現れています。
装備、部屋の内装、航空機にそのこだわりが見え、それに一種の美学さえ感じます。
ヤラナイカなど笑えるネタもあり、懐かしい気持ちで読んでいました。
そしてさらに好感が持てるのは効率重視のプレイヤーを完全否定しているわけではないことです。
自分の主義主張を無理矢理にでも押し付けがちなネットでありますが、他人の思想を完全に否定しない姿勢はゲームに限らず大事なことだと思います。
何のためにゲームをしているのか分からなくなった人たちの清涼剤となればと思い、レビューを終わります。
再びゲームに向き合いたくなる素晴らしい物語をありがとうございました。
オンラインゲームで、特にフルダイブVRを題材にしている物語ではβテストからの参加が多い印象があるジャンルの中で、「2度のメジャーアップデートを経た」と言う世界を舞台にしている珍しい物語です。
テーマもチートやスキルに頼ったり超絶プレイで他を圧倒したりではなく、初心者は初心者らしく成長し、ベテランはベテランらしく初心者を導くものというのも珍しい。
剣と魔法と銃器と兵器の世界ArmsWorldは、極端に言えば「どんなモンスターでも最高速まで加速させた航空機で絨毯爆撃すればいい」乱暴な攻略法が主流であり、ベテランは皆、その戦法をとれないプレーヤーのパーティ参加すら拒否し、マウントを取るプレーヤーも少なくない場所。
序盤で初心者・ヨウも、その洗礼を浴びます。
それを救い、「私が倍の働きをするから、彼をパーティに参加させて下さい」と言うベテランプレーヤー・セコとの出会い、セコが組織するチームメンバーとの交流に、狩りゲーやソリャゲーに関する作者の観察眼が光る様に感じられます。
リセマラに代表される効率プレイを否定するのではなく「それも一つの楽しみ方」とするからこそ、効率を無視してのなりきりプレイや、パラメータよりも格好良さやデザインを重視した趣味装備も「一つの遊び方」だと考えられる。
主将・セコが率いる初心者・ヨウ、nun・もも、強襲ニンジャ・綾音、傭兵・ジョシュア、遅れてきた伊達男・イーグルの趣味装備軍団は、ゲームをプレイするのではなく「ゲームで遊ぶ」事をモットーにして結成されたチームというのは、作中の彼らが「初戦ゲームだから」という醒めた見方をせず、戦いは熱く、普段はバカバカしく過ごしているというのも、私には意味がある様に思えます。
今でこそゲームは基本無料で課金要素があり、5分くらいの隙間時間にもできるものが増えましたが、嘗ては暇つぶしにするものではなく、学業や仕事の時間をやりくりして、「自分の時間を作ってやる特別な遊び」だった事を思い出させてくれる物語です。
きっと全ての趣味が、そういう時間を作ってするものなのです、本当は。
無論、読書も、スナック感覚で消費するように隙間時間にするものではなかったはずです。
そう言うものを思い出させてくれた物語だからこそ、参加しているコンテストで受賞しき、本になって欲しいと思えます。
趣味は暇つぶしにするものではなく、自分で時間を作って楽しむものだとお考えの諸兄に、是非手に取って欲しいです。