告白されたが罰ゲームと分かり別れたはずのグラビアギャルが「何でもするから」と毎日家に押しかけてくる件

田中又雄

第1話 オタクに優しいギャル

 俺は本当に、インキャだった。


 クラスでも隅っこの方、いつも一人で本を読んだりスマホをいじったりしていた。

男女ともに話しかけられることなんてほとんどない。

オタク趣味全開で、休みの日は家でアニメ見たりゲームしたり。

それが俺の日常だった。


 そんな俺が、唯一心を奪われていたのが、白川白乃だった。


 グラビアもやってる読モで、SNSのフォロワー数は軽く十万超え。


 金髪のロングヘアに、いつも明るい笑顔。

胸もデカくてスタイル抜群なのに、性格はめちゃくちゃ優しい。

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/2912051595325857652


 オタクの俺みたいなのに「ねえ、このアニメ知ってる?」とか普通に話しかけてくる、珍しい1軍ギャル。


 そして、よく話すようになったのは隣の席になったのがきっかけだった。


「田中くん、今日の数学の宿題分かった? 私、全然わかんないんだけど……教えてくれない?」


 最初はびっくりした。

俺の名前、ちゃんと覚えてくれていたんだと。

しかも俺みたいなやつに笑顔で頼んでくるから、断れなくて…多分都合よく使われてるだけど分かりながらも、そこから少しずつ、休み時間に話すようになった。


 白川さんは本当に不思議な子だった。

陽キャの輪の中にいても、俺みたいな暗い奴に優しいし、俺なんかにもグラビアの撮影話とか、面白おかしく教えてくれる。


 そして、あの日のこと。

放課後、屋上で。


「田中くん……好き。付き合ってくれない?」


 突然の告白に、俺の頭は真っ白になった。


「え……俺? 本当に?」

「うん。本当に。ずっと気になってたんだ」


 彼女の瞳はまっすぐで、頰が少し赤い。

俺は震える声で「う、うん……」としか言えなかった。


 それからの1ヶ月は、本当に夢みたいだった。


 初めてのデートは、近くのショッピングモール。


 白乃さんは俺の手を自然に握ってきて、「照れちゃうね、田中くん♡」って笑ってくれた。


 映画館で手を繋いだまま観て、怖いシーンで彼女が俺の腕にしがみついてきたり、その時のあの柔らかい感触と、甘い香りは多分忘れられなくて…俺の心臓は爆発しそうだった。


「田中くん、今日めっちゃ楽しかった! また来週も行こうね」


 帰り際のキス(ほっぺにだけど)にしてくれた。

俺は家に帰ってからも、ベッドで天井を見つめながらニヤニヤが止まらなかった。


 こんな俺が、グラビアギャルの彼女ができるなんて…信じられなかった。


 毎晩LINEで「おやすみ♡」が来るたびに、胸が熱くなった。


 二回目のデートは遊園地。

白乃さんはジェットコースターで叫びながら俺に抱きついてきて、降りたあと「怖かったけど、田中くんとだから楽しかった!」と言ってくれた。


 俺は照れながら「俺も……幸せだよ」と小さな声で返した。

彼女は「えへへ、かわいい!」と、頭を撫でてくれる。


 学校でも変わった。

休み時間に白乃さんが俺の席とくっつけて「ねえ、今日の弁当一緒に食べよ?」とか言ってくれた。


 ちなみにクラスメイト、特に彼女が仲良くしている陽キャの人たちも、そのことをいじってくることもなく、なぜか当たり前に受け入れてくれていた。


 けど、教室でイチャイチャするのは俺は死にそうなくらい恥ずかしかった。

でも、嬉しかった。


 3回目のデートは夜の水族館。

暗い照明の中でクラゲがゆらゆら光ってる中、白乃が俺の肩に頭を乗せてきた。


「田中くん……好き。大好きだよ。本当に」


 その言葉に、俺の目が熱くなった。

こんな綺麗で人気者の子が、俺を好きだって。罰ゲームとか、冗談とか、そんな疑いすら浮かばなかった。

俺はただ、純粋に幸せだった。


 あぁ、ずっと続いてくれ…とそう思っていた。

そんな1ヶ月の記念日のことだった。



 ◇


 その日も、俺は朝から浮かれていた。

学校で白乃さんに会ったら、「1ヶ月記念だね」って小さなプレゼントを渡そうと思って、昨日こっそり買ったネックレスをポケットに入れていた。


 結構いい値段したけど、前に欲しいって言ってたの覚えてて…1ヶ月のプレゼントとしてはちょっとやりすぎたかも?とか思いながらも、喜ぶ彼女の顔を想像すると笑みが溢れた。


 いつ渡そうと悩んでいたそんな昼休みの時間。


 いつものように白乃さんと楽しく話していると、クラスで一番の陽キャ男子――佐藤康太って奴――が、白乃さんに向かってこう言った。


「そろそろ付き合ってくれよー、白乃〜」


 彼氏の前で何言ってんだこいつ…と、俺は思わずイラっとした。


 すると、その俺の目つきに気がつくと『何睨んだんだよ』というわけでもなく、なぜか笑い始める。


「って、まさかまだ付き合ってんの?w ちゃんとネタバレしてやらないと可哀想だろ?あの告白は罰ゲームだって」


 一瞬、教室が静まり返った。

白乃の顔が、焦ったような顔になる。


「……あ、いや……違くて!」


 その瞬間、俺の胸に冷たいものが刺さった。

罰ゲーム。


 全部、罰ゲームだったのか。

1ヶ月分のデート、握った手、キス、好きだよって言葉も…全部?

友達との遊びのネタで、俺はただの道具だったってこと?


 白乃さんが俺の方を見て、慌てたように何かを説明するも何も耳には入ってこなかった。


 そんな中、俺は小さく呟いた。


「あー……分かってたけどね」


 強がりだった。

声が震えてるのが自分でも分かった。

でも、プライドだけは守りたかった。


 それから、何度も彼女が話しかけてくるも、全て無視した。

そもそも何も耳に入ってこなかった。


 気づくと放課後になっていて、いつの間にか家にいた。

そして、LINEを開くと、色々と文章が送られていたが、震える指で文章を送った。


『ありがとう。嘘でも楽しかったです。さような

ら』


 送信して、即ブロックした、


 それから、写真フォルダを見て、涙を流しながら全部削除した。


 胸が張り裂けそうだった。

そりゃ、そうだよな。

何舞い上がってんだろ。

人生で初めて学校が楽しいって思えたのに…こんなのって…。


 それからの俺は、完全に無視モードになった。

白乃さんは何かと話しかけてきた。


「田中くん……あの、話したいんだけど……」

「田中くん、あのね…」


 俺はそっけなく「うん」「ああ」と返すだけ。


 明らかに話したくないオーラを出してるのにいまだにしつこく話しかけてくることにむかついた。

本当に、心底むかついた。

俺の傷を、わざわざ抉ってることを何でするのか。


 裏で俺のラインとかをみんなに晒して、馬鹿にしていることとか想像すると、本当に腹が立って仕方なかった。


 そしね、ある日、限界が来た。


 放課後の教室。

まだ何人か残ってる中で、白乃さんがまた近づいてきて「ねえ、土曜日に……ちゃんと」と言いかけた瞬間、俺は立ち上がって大声で言った。


「もういい加減にしろよ!罰ゲームだったんだろ?俺を玩具にして楽しかったか?二度と話しかけるな!…この…ブスが!!」と、そう言い放った。


 教室が凍りついた。

白乃さんの瞳が、ほんの一瞬、痛そうに揺れた。

なんだよ、その顔…。

傷ついてんのは俺なんだよ!


 俺はもう見たくなかった。

カバンを掴んで教室を飛び出した。


 こうして、関係は完全に終わったはずだった。



 ◇翌日の土曜日


 朝から雨が降っていた。

俺は部屋でゲームして気を紛らわせてた。


 親は出かけてるし、一人きり。


 心の中はまだぐちゃぐちゃだった。

ゲームをしていても全く楽しくない。

何をしていても心の穴が埋まらなかったのだ。


 あの1ヶ月の記憶が、全部毒みたいに疼く。


 ピンポーン。


 インターホンが鳴った。

誰だよ……宅配か?


 モニターを見たら、そこに立ってたのは――白乃さんだった。


 濡れた髪に可愛らしい私服。

でも表情は真剣でどこか虚な表情。


 俺は呆然としてドアを開けた。


「白乃さん……?…何しに来たんだよ。また…罰ゲームか?」と、空笑いしながらそう言った。


 彼女は一瞬息を飲んで、俺をまっすぐに見つめてきた。


「田中くん……ごめん。本当にごめん。でも、ちゃんと…説明したくて…」


 何の説明だよ。

俺が冷たく「帰れよ」と言おうとした瞬間、白乃さんは頭を深く下げた。


「何でもするから……。許して。なんでも……。だから…もう一度、チャンスをくれない?」


 雨の音だけが響く中、俺の心臓がまた、激しく鳴り始めた。


 この子は……本気で、何をしに来たんだ?

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