番外編『ヴィランズアラカルト〜ハロウィン〜』
ハロウィン当日の昼、とあるレストランを貸し切って演者達の集うパーティーが行われていた。
「美味いもん食えるのは良いけどさぁ」
クゥルフは不満を零す。
「この堅苦しい格好どうにかできねぇかな」
彼はいつもとは違い紺色のスーツ姿だった。
「何を今更。毎年の決まり事じゃろうが」
そう口にしたのはウィチカ。彼女は深緑のドレスを身に纏っている。
「てかババア、主役でもないのに派手過ぎねぇか?」
「またその口を魔法で塞いだ方が良いかの」
「悪かったって。そういや妖鬼達は?」
「さぁな。まぁ直に――」
その瞬間、妖鬼の声が響いた。
「マラミーさん!?」
叫びにも近いその声を耳にしたクゥルフとウィチカは即座に反応した。
「ん?今のって」
「妖鬼の声じゃな」
「あっ!師匠とクゥルフさん!」
そこへ声をかけてきたのは悪役仲間のルゾック。
「おぉ、ルゾックじゃねぇか」
ルゾックは不安げに尋ねる。
「あの、さっきの声って妖鬼さんでしたよね?」
「マラミーの名を叫んでいたあたり、彼女に何かあったんじゃろうな」
「行くぞババア、ルゾック!このままだとマラミーが危ない気がする」
「たしかにそうじゃな!」
「えっ、妖鬼さんへの信頼は?」
三人は声がした方へ向かった。
ざわつく会場内を小走りで駆け抜けた先に二人はいた。
床に座り込むマラミーとその場で立ち尽くしている妖鬼。クゥルフは真っ先に妖鬼に詰め寄った。
「妖鬼!てめぇマラミーに何をした!」
「いや誤解だクゥルフ!私は何もしていない!」
「じゃあこの状況はどういうことだよ!?」
「そ、それが私にもよくわからず……」
その横でウィチカがマラミーの肩を揺する。
「大丈夫かマラミー!」
「あらウィチカさん、聞いてください!」
「何をじゃ!妖鬼が何か――」
「これまでの推しが大集合してますの!わたくし危うく尊死するところでしたわ!!」
マラミーの発言はウィチカ達の度肝を抜いた。
「ご無事ですか!?」
少々遅れてやって来たルゾックが切羽詰まった様子で尋ねる。
「無事って、誰か何かありましたの?」
「あれ?マラミーさんが大変なことになっていたんじゃ……?」
その言葉にマラミーは首を傾げる。
「あら?わたくしは通常運転ですわ」
「そ、そう、ですか……」
ルゾックは安堵するも、周囲の注目を浴びていることに気がついた。
「とりあえずみなさん、一旦外に出ましょうか」
「あ、ああ」
「そう、だな」
「ほれ、行くぞマラミー」
「わかりましたわ」
五人は会場をあとにした。
ヴィランズトーク チェンカ☆1159 @chenka1159
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