もう一度、海のそばで生きていく。

都会に疲れ、心を閉ざした青年が故郷の海で再び“呼吸”を取り戻す――
『深海の呼吸』は、海と人の心を巧みに重ね合わせた、美しくも切ない物語です。

けれどこれは単なる癒しの話ではありません。

過去の事故、残された疑念、そして言葉より深いところで触れ合う心。
登場人物それぞれの痛みが、波のように寄せては返す。

ダイビングの描写はリアルで、読んでいると一緒に呼吸が浅くなったり、水中の圧に心が吸い込まれるような感覚を覚えます。

「沈黙の世界」でしか伝わらない信頼やぬくもりが、丁寧に描かれていて、人と人がもう一度つながる瞬間をそっと見せてくれるような作品です。


物語はまだこれから。
過去に縛られたままの彼らが、どんな形で赦しや希望を見つけていくのか――その行方を見届けたくなる……次の一話が待ち遠しい、そんな作品です。


海のそばで、誰かと呼吸を合わせて生き直す……そんな時間を、一緒に感じてみませんか。

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