第15話 反いくら丼といくら丼の信者?違う俺達は


 反いくら丼教団が去った後、三人は牧場の柵にもたれて呆然としていた。アカウシたちも安心したのか、静かに草を食み始めている。


 「いくら丼信者...か」


 ガレンが複雑な表情で呟く。


 「なんだか変な感じね。私たちって信者なのかしら?」


 リナが首をかしげる。


 クロエが地面に座り込んで言った。


 「俺は別に、いくら丼を崇拝してるわけじゃないんだがな」


 『君たちは確かに信者ではないだろう』


 フェンガルが同意する。


 『信者というのは、盲目的に何かを信じる者だ。君たちは違う』


 「そうよね」


 リナが安堵の表情を見せる。


 「私たちは、ただ純粋にいくら丼を食べてみたいだけ。それって信仰とは違うわよね」


 ガレンが剣を鞘に納めながら考える。


 「確かに。俺たちは【探求者】なんだ。未知のものに対する好奇心で動いている」


 「そうそう」


 クロエが立ち上がる。


 「美味しいものを食べたい、新しい世界を見てみたい。それだけの話だ」


 『その通りだ。君たちの心に邪な思いはない』


 フェンガルが誇らしげに言う。


 『だからこそ、マシガルの幻影を突破してナンミョウを見ることができた』


 その時、牧場の家からオンジが駆け寄ってきた。


 「大変な音がしていましたが、大丈夫でしたか?」


 「はい、ツノ熊の問題は解決しました」


 ガレンが報告する。


 「本当ですか! ありがとうございます」


 オンジが感激で涙を流す。


 「でも、ツノ熊は倒さずに済みました。毒を抜いたら、元の大人しい性格に戻ったんです」


 リナが説明すると、オンジの目がさらに輝いた。


 「素晴らしい! 命を奪わずに解決するなんて、あなた方は本当に心優しい方々だ」


 「約束通り、アカウシ肉をお分けしますよ」


 オンジが嬉しそうに言う。


 「それと、今夜の活躍を見ていて思ったのですが、あなた方は普通の冒険者とは違いますね」


 「どういう意味ですか?」


 クロエが尋ねる。


 「命を大切にする心、真実を見極める目、そして仲間を信じる絆。そういうものを持っている」


 オンジが穏やかに微笑む。


 「きっと、あなた方が求めているものも、ただの食べ物ではないのでしょうね」


 三人は顔を見合わせた。確かに、いつの間にかいくら丼は単なる料理以上の意味を持ち始めていた。


 「俺たちは、いくら丼探求者だ」


 ガレンが胸を張って宣言する。


 「信者でも狂信者でもない。ただの、好奇心旺盛な探求者なんだ」

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